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前立腺肥大症…ED治療薬排尿にも効果

尿がなかなか出ない、残尿感がある、などの症状が表れる前立腺肥大症。その治療薬に近く、現在は勃起障害(ED)の治療に使われている薬が新たに加わる。

 外科治療も近年、電気メスやレーザーにより体に負担が少ない方法が広まり、治療の選択肢が広がってきている。 前立腺はクルミ大の臓器で、男性の膀胱ぼうこうの下に、尿道を包むように位置する。精液の一部を分泌し、射精にも関わる。排尿時は、自律神経のうち副交感神経が優位になり、膀胱が収縮して前立腺が緩む。
逆に、尿を蓄えている時は交感神経が優位になり、膀胱が広がって前立腺が締まる。 前立腺が肥大すると尿道が圧迫されて尿が出にくくなり、勢いも弱くなる。尿が残ることで膀胱の働きが過剰になり、何度もトイレに行く頻尿になる患者も多い。  
山梨大教授の武田正之さん(泌尿器科)によると、原因は不明だが、40歳代後半から始まるホルモンバランスの変化のほか、最近は何らかの炎症が原因との説も有力だという。

肥大は60歳代で半数、80歳代で約9割にみられるが、症状が出るのはその半分程度だ。  薬物療法で最もよく使われるのがα1遮断薬。交感神経の働きを邪魔して前立腺の筋肉を緩める。
その結果、尿道に対する圧迫が弱まり、尿が出やすくなる。  α1遮断薬と併用することが多いのが、抗男性ホルモン薬。
前立腺の機能を維持する男性ホルモンの作用を邪魔して、前立腺を小さくする。根治も期待できる反面、効果が出るには数か月かかる。  

新たな薬として保険適用されるのは「タダラフィル」(商品名・ザルティア)。
筋細胞は、一酸化窒素を取り込んで筋肉を緩める物質を作る仕組みがある。タダラフィルは、その物質を分解する酵素の働きを抑えることで、尿道や前立腺、膀胱出口付近の筋肉を緩めて排尿しやすくする。
α1遮断薬や抗男性ホルモン薬との併用もできる。  
ED治療では、タダラフィルは商品名「シアリス」として、保険がきかない自費診療で使われている。ザルティアと同じ仕組みで陰茎周辺の血管の筋肉に作用し、血流を増やす。
米国では2011年から、EDと前立腺肥大症の両方に使えるようになった。  
ザルティアは、4月下旬か5月上旬から使える見通しだ。同じ薬が自費診療と保険診療に分かれることになるが、武田さんは「それぞれの適応を守って使う必要がある」と注意を促す。  
頻尿には、交感神経の働きを強めて膀胱を緩めるβ3受容体活性薬が11年に発売された。副交感神経の働きを邪魔する抗コリン薬もよく使われるが、副作用で尿がほとんど出なくなる恐れもある。  
薬物療法で満足な効果が得られない時に検討されるのが、外科治療だ。  

肥大が大きい場合は開腹手術が必要だが、主流は、尿道から内視鏡を入れて肥大部位を内側から削り取る経尿道的前立腺切除術。電気メスを使うことが多いが、出血が少ないレーザー治療も普及してきている。  
武田さんは「前立腺肥大症の症状は、季節や飲酒などの影響で一時的に出ることがあり、生活指導も大切。症状があるのに治療せずに放置していると、膀胱の収縮力が衰えてしまい、肥大症の手術をしても排尿状態が良くならない場合もある」と話している。
(藤田勝) (2014年3月20日 読売新聞)