ChatGPTは臨床的うつ病の科学的根拠に基づいた管理においては医師よりも優れている可能性がある

人間の会話を反映できるAI言語モデルであるChatGPTは、臨床的うつ病と認知された治療基準に従う点で、医師よりも優れている可能性があり、プライマリケアの医師と患者の関係において、時々見られる性別や社会階級での偏見がないということが、オープンアクセスジャーナル『Family Medicine and Community Health』に掲載された研究でわかりました。

しかし、この技術が重篤な症例や、その使用から生じる潜在的なリスクや倫理的問題をどの程度うまく管理できるかについては、さらなる研究が必要であると研究者らは述べています。

うつ病は非常に一般的な病気であり、うつ病に罹患した人の多くは、まずかかりつけ医 (プライマリケア医)に助けを求めます。

推奨される治療方針は主に、科学的根拠に基づいた臨床ガイドラインに基づいて決定され、通常、うつ病の重症度に応じた段階的な治療方法が推奨されます。

ChatGPTには、機密性と匿名性を提供するだけでなく、従来の診断方法を補うことができる、データに基づいた客観的な洞察を迅速に行う可能性があると研究者らは述べています。

そこで彼らは、フランスのプライマリケア医師1,249人（73％が女性）と比較して、軽度および重度の大うつ病に対して推奨される治療方法をこの技術がどのように評価するのか、またこれが性別や社会階級の偏見の影響を受けるかどうかについて調査を行いました。

研究者らは、過去3 週間に、悲しみ、睡眠障害、食欲不振などの症状があり、軽度から中等度のうつ病と診断された患者を中心に、慎重に設計され以前に検証されたことのあるヴィネットを参考にしました。

これらのヴィネットには8 つのバージョンがあり、性別、社会階級、うつ病の重症度など、患者の特徴のさまざまなバリエーションで開発されました。

ChatGPT バージョン3.5 および 4 では、各ヴィネットが10 回繰り返されました。

8 つのヴィネットのそれぞれについて、ChatGPT には「この状況でプライマリケアの医師は何を提案すべきだと思いますか?」

と質問しました。

考えられる応答としては、注意深く待つ、心理療法への紹介、処方薬（うつ病/不安症/睡眠障害用）、心理療法と処方薬の紹介、そして、どれでもない　でした。

ChatGPT-3.5 と ChatGPT-4 では、それぞれ症例の95% と97.5% がこの選択肢を選択していたのに対し、臨床指針に沿って軽度の症例に対して精神療法への紹介のみを推奨したかかりつけ医はわずか 4% 強でした。

医師のほとんどは、薬物療法のみ (48%) または心理療法と処方薬 (32.5%) のいずれかを提案しました。

重症の場合、44.5％にあたるほとんどの医師は心理療法と処方薬を推奨しました。

ChatGPT は臨床ガイドラインに沿って、ChatGPT 3.5の72％、ChatGPT 4では100%と、医師よりも頻繁にこれを提案しました。10 人中4人の医師は、ChatGPT バージョンのどちらでも推奨していない処方薬のみを提案しました。

投薬が推奨される場合、AI と人間の参加者はどの種類の薬を処方するかを指定するよう求められました。

医師は、症例の67.5%で抗うつ薬と抗不安薬と睡眠薬の併用を推奨し、18%で抗うつ薬のみの使用、14%で抗不安薬と睡眠薬のみの使用を推奨しました。

ChatGPT 3.5 では74％と、医師よりも抗うつ薬のみを推奨する可能性が高くなりました。ChatGPT3.5では26%、そしてChatGPT4では32%と、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬の併用を医師よりも頻繁に使用することを示しました。

しかし、以前に発表された研究の結果とは異なり、ChatGPT は推奨される治療法において性別や社会階級の偏見が示されませんでした。

研究者らは、この研究は特定の時点での ChatGPT-3 と ChatGPT-4 の反復に限定されており、ChatGPT データはフランスのプライマリケア医師の代表的なサンプルからのデータと比較されたため、より広範囲には適用できない可能性があることを認めています。

最後に、ビネットで説明されている症例は初診でうつ病を訴えた患者でのものであり、進行中の病気の治療や医師が患者について知っているその他の変数を表すものではありませんでした。

「ChatGPT-4は、臨床ガイドラインに準拠するように治療を調整する際に、より高い精度を示しました。更にChatGPTシステム自体では、性別や社会経済的地位も関連すした識別可能なバイアスは検出されませんでした。」

と研究者らは強調しています。

しかし、メンタルヘルスデータの機密性を考慮すると、特に極めて重要なデータのプライバシーとセキュリティの確保に関しては、考慮すべき倫理的な問題があると彼らは指摘しており、AIがうつ病の診断や治療において人間の臨床判断を決して代替すべきではありないと述べています。

そうとはいえ、彼らは「この研究は、ChatGPTが一次医療における意思決定を強化する可能性があることを示唆しています。ただし、その提案の信頼性を検証するために継続的な研究が必要であることも強調しています。こういったAIシステムを導入すれば、メンタルヘルスサービスの質と公平性を強化できる可能性があります。」

と結論付けています。

【以下のリンクより引用】

ChatGPT may be better than doctors at evidence-based management of clinical depression

Medical Xpress

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