HIV感染を防ぐジェル
HIV感染は主に性行為によって広がり、直腸が感染の場となることもしばしばあります。全世界で問題となっているAIDS(後天性免疫不全症候群)の対策のため、直腸に抗ウイルス薬の入ったジェルを塗ることで感染を防止する方法が開発されました。サルを使った実験から、ウイルス感染が有効に防がれる結果が得られました。
研究班は、HIVに使われる抗ウイルス薬のマラビロク、テノホビル、またはそれらの両方を有効成分とする、3種類のジェルをアカゲザル6頭ずつの直腸に塗って、有効成分が十分血液に取り込まれ、直腸にも残るかを調べました。
また、ジェルを塗った直腸に、HIVに似せた人工のウイルスであるSHIVを繰り返し触れさせることで、感染を防ぐ効果があるかどうかを調べました。
実験から次の結果が得られました。
マラビロクとテノホビルは、ジェルを塗ってから30分後には血漿の中に検出され、24時間後にも直腸分泌液の中でIC95以上の水準に保たれていた。3種類のジェル製剤すべてが高い保護作用を示した(有効率82%、log-rank検定でP≦0.02)。
マラビロクもテノホビルも、ジェルを塗って30分後には血液中に検出され、直腸の表面でも24時間後まで十分高い濃度に保たれていました。また、感染を防ぐ有効率は82%でした。
研究班は、「このアカゲザルのモデルにおける望ましい薬物動態と高い有効性は、これらのジェル製剤を直腸からのHIV感染予防のために臨床開発することを支持する」と結論しています。
AIDSは免疫の働きを弱らせて深刻な細菌感染などを起こすことをはじめ、カポジ肉腫や認知機能障害などにつながる場合もあり、治療薬が進歩した現在でも恐るべき感染症です。HIV感染を防ぐことが重要な対策であり、この研究もその候補に加わっていくかもしれません。
記事元:http://medley.life/news