シルデナフィルはスイマーの重症浮腫を軽減
デュークヘルスの研究者が小規模な研究から得た知見によると、スイマーやスキューバダイバーなど、冷たい水による肺水腫で、突然、潜在的に生命が脅かされることになりやすい人達には、単純かつ容易に入手可能なシルデナフィルが効果的であるようです。
バイアグラとしてよく知られているこの薬は、通常、男性のインポテンスの治療に使用されますが、それだけでなく、肺動脈性肺高血圧症の治療にも使用されています。
血管を拡張させる作用があり、心臓や肺内の血液滞留に繋がる可能性のある腕や足の血管の急激な冷水誘発性収縮を緩和する可能性があります。
喀血や呼吸困難、血中酸素の低下などの症状のある水泳誘発性肺水腫、または、SIPEと呼ばれ症状は通常、冷たい水の中での水泳やスキューバダイビングを行うアスリートやダイバーにみられます。
多くの場合、症状は24時間以内に消散しますが、状態が深刻化したり、さらには命にかかわる場合もありますので、医師の診察が勧められます。
ただ、彼らの多くは自分がこの症状にかかりやすいのかどうか、入水し、すぐに発症するまではわかりにくいという傾向があります。
筆頭著者で、デュークセンターの医療ディレクターで麻酔科医でもある、リチャード ムーン博士は、米国心臓協会誌の中で、「SIPEのいくつかの例は、心臓の問題の結果であったと思われます。」と述べています。
ムーン博士と同僚は、トライアスロンに出場し運動中や競技中に症状を経験した10人のアスリートにおいて研究を行いました。
参加者はダイビングプールの水中で運動を行い、水泳中にSIPE反応を誘発する可能性がある条件下で運動を行いました。
研究者たちは、SIPEの既往歴のなかった他の20人の参加者とを比較しました。
いずれの群での参加者はいずれも、心臓の異常はありませんでしたが、SIPEを起こしたことのある選手は、水中運動中に高い肺動脈圧と肺動脈楔入圧を有し、SIPEは、肺内の血管内の高圧によって引き起こされる肺水腫の一形態であると確認しました。
SIPEが見られた参加者には、シルデナフィルが投与され、その後、同じ水中運動を行ったところ、血管圧の上昇は見られませんでした。
「これは小規模な研究ですが、これだけでなく、直接、圧力測定に集中しています。」とムーン博士は述べました。
「血管を拡張させる薬が、腕や足の血管へもより多くの血液を送リ出すことができ、胸部に再配する傾向を低減し、それにより肺血管内の高圧を減少させることができることが示されます。」
研究の参加者であるトライアスロン選手のキャサリン カルダー・ベッカーは、SIPEの発作により彼女の競技人生が脅かされたと述べました。
彼女はプールでのトレーニング中に問題はなかったものの、その後、より水温の冷たいオープンウォーターでの競技中に、呼吸困難や、息切れによる衰弱を経験しました。彼女は喀血し、一度入院しました。
51歳のカルダー・ベッカー選手は、SIPEと診断され、その後2011年にデュークセンターでの研究に登録されました。その後、彼女は臓病専門医に相談し、大会直前に低用量のシルデナフィルを服用するようになりました。
「私はシルデナフィルの服用を開始してから、10キロの遠泳のある5つのウルトライベントを含め20回もトライアスロンに参戦しています。」とカルダー・ベッカー選手は述べました。
「それ以来、発作はありません。私は競技への出場をあきらめたくはありませんでした。なぜなら、競技は私が夫と一緒に行えるのもであり、一緒に旅行競技に出かけられるという理由があるからです。私にとっては継続こそが全てなのです。」
ムーン氏は、より大きな研究により成果を再現し、薬の有害な副作用の可能性についての詳細をも学ぶことが必要とされていると述べました。
彼はまた、更なるSIPEの原因と早期診断の潜在的な方法に照準をあてた研究が進行中だと述べています。
(記事元)http://medicalxpress.com/news/2016-02