【新薬】アナグレリド アグリリン:新機序の本態性血小板血症治療薬
2014年11月25日、本態性血小板血症治療薬アナグレリド塩酸塩水和物(商品名アグリリンカプセル0.5mg)が薬価収載と同時に発売された。1回0.5mgを1日2回経口投与する。なお、増量する場合は1週間以上の間隔をあけて1日用量0.5mgずつ行い、1日4回を超えない範囲で分割して投与する。ただし1回用量2.5mgかつ1日用量10mgを超えてはならない。
本態性血小板血症(ET)は、血小板数の増加、巨核球の過形成、出血や血栓傾向を特徴とする多能性造血幹細胞のクローン異常の疾患である。症状と徴候には、脱力、頭痛、感覚異常、出血、脾腫、指の虚血などがある。
診断は(1)血小板数45万/μL以上が持続する(2)骨髄生検で巨核球の増加を認める(3)JAK2遺伝子あるいは他の腫瘍マーカーを認める(4)原発性骨髄線維症やフィラデルフィア染色体(またはBCR-ABL融合遺伝子)を認める慢性骨髄性白血病など、血小板増加症を引き起こしうる疾患が存在しない――ことに基づいて行っている。
ETは通常50~70歳の間に生じ根本的治療法がないことから、重篤な転帰につながる可能性がある血栓または出血性事象の発生を防ぐために、増加した血小板数を減少させることが治療目標となっている。国内では、ETに適応を有するラニムスチン(商品名サイメリン)、ヒドロキシカルバミド(商品名ハイドレア)が臨床使用されてきた。一方で、これら薬剤に対して不応性や不耐容の際に使用できる新しい治療薬の開発が求められていた。
アナグレリドは当初、血小板凝集阻害薬として開発されていたが、反復投与された健康成人被験者に血小板減少が多く認められたことから、その後は血小板減少を目的として開発された薬剤である。血小板減少の主な作用機序としては、血小板の前駆物質である巨核球に選択的に作用することで、血小板産生を抑制すると考えられている。
国内第3相臨床試験では他剤に不応性/不耐容例、海外第3相臨床試験では新規の高リスクET患者に対して、それぞれ長期にわたり優れた血小板減少効果が認められた。海外では1997年3月に米国で、2004年11月に欧州(EU)で承認され、2014年5月現在世界47カ国で承認されている。
日本では、2010年に「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」で高い評価を受けて開発が進められ、今回の承認・発売に至っている。本薬は2013年に希少疾病用医薬品に指定されている。
ET患者を対象とした国内臨床試験で、92.5%に副作用が認められている。主な副作用は貧血(49.1%)、頭痛(43.4%)、動悸(34.0%)、下痢(22.6%)、末梢性浮腫(22.6%)などであり、重大な副作用は心障害、QT間隔延長、心室性不整脈、間質性肺疾患、出血、血栓塞栓症、貧血、血小板減少、白血球減少、ヘモグロビン減少、リンパ球減少、好中球減少が報告されている。
なお本薬は、承認時までの国内臨床症例が限られていることから、一定数の症例データが集積されるまでは全症例で使用成績調査を実施することに留意する。
==日経メディカルより抜粋==
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201412/539991.html?ref=RL2