【新薬】ネスプ注射液プラシリンジ 透析導入前から使用可能な持続型EPO製剤が登場
==日経メディカルより抜粋==
2010年6月11日、持続型赤血球刺激因子製剤のダルベポエチン アルファ(商品名:ネスプ注射液プラシリンジ)が薬価収載された。本薬は、既に4月16日に製造承認されており、8月下旬に発売が予定されている。なお、この発売に伴い、これまで販売されていた「ネスプ静注用プラシリンジ」は経過措置品目となる予定である。
ダルベポエチン アルファは、腎臓尿細管周囲の間質細胞で産生されるエリスロポエチン(EPO)の産生低下によって引き起こされる「腎性貧血」の治療に使用される薬剤である。従来、透析施行中の腎性貧血には、ヒトエリスロポエチン製剤のエポエチンアルファ(商品名:エスポー)やエポエチンベータ(商品名:エポジン)などが使用されていた。これらのヒトエリスロポエチン製剤は、透析患者における貧血状態を改善し、定期的な輸血を必要とする患者を激減したことで、患者のADLやQOL向上に大きく貢献してきた。
しかしながら、確実な貧血改善効果を示すには、これらのヒトエリスロポエチン製剤を週2~3回投与しなければならず、患者の身体的負担が大きかった。また医療従事者側からも、医療事故防止の観点から、投与回数の少ない製剤の開発・承認が熱望されていた。
こうした声を受けて開発されたのが、2007年7月に発売された、持続性腎性貧血治療薬の「ネスプ静注用プラシリンジ」(一般名:ダルベポエチン アルファ)である。同剤は、ヒトエリスロポエチン製剤のアミノ酸配列の一部を改変し、新たな糖鎖を付加させることで、血中半減期を延長した製剤で、週1回の投与でガイドラインの目標ヘモグロビン値を達成することができる。発売以来、日本では臨床現場で広く使用されているほか、2009年10月現在、米国、欧州をはじめとする世界55カ国で承認されている。
今回、薬価収載された「ネスプ注射液プラシリンジ」は、従来の「ネスプ静注用プラシリンジ」と成分は同じであるが、投与対象に「保存期(透析導入前)の初期・維持投与期」「透析期の初期」が追加され、透析に入る前の慢性腎臓病患者に使用できるようになったことが、大きな違いである。。
■経過措置移行予定品目
【商品名】ネスプ静注用プラシリンジ
【主な効能・効果】透析施行中の腎性貧血
【投与対象】透析期の維持投与期
■新規発売予定品目
【商品名】ネスプ注射液プラシリンジ
【主な効能・効果】腎性貧血
【投与対象】保存期(透析導入前)の初期・維持投与期、透析期の初期・維持投与期
薬剤使用に際しては、承認時までの臨床試験で32.2%に副作用が認められていることに十分注意する必要がある。主な副作用は、血圧上昇(17.0%)、シャント血栓・閉塞(3.0%)、頭痛(1.9%)、倦怠感(1.4%)などであり、重大な副作用としては、脳梗塞(0.9%)、脳出血(0.1%)、肝機能障害・黄疸(0.1%)、高血圧性脳症・ショック・アナフィラキシー様症状・赤芽球癆・心筋梗塞・肺梗塞(それぞれ頻度不明)が認められている。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201007/515929.html