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アリスキレン:10余年ぶりの新機序降圧薬「レニン阻害薬」

2009年7月7日、直接的レニン阻害薬のアリスキレンフマル酸塩(商品名:ラジレス錠150mg)が製造承認を取得した。適応は「高血圧症」であり、「1日1回1錠(150mg)を経口投与」が標準的な用法・用量である。  現在、高血圧の治療薬として使用されている薬剤としては、利尿薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)などがある。中でも近年、高血圧に伴って起こる多くの合併症に深く関連しているレニン・アンジオテンシン(RA)系を抑制するACE阻害薬およびARBが、国内外の高血圧治療ガイドラインで中心的な薬剤として位置づけられている。  今回、承認されたアリスキレンは、RA系の活性起点であるレニンの産生を阻害することで降圧作用を発揮する、新しい作用機序のRA系降圧剤である。わが国で、新機序の降圧薬が承認されるのは、ARBのニューロタン(一般名:ロサルタンカリウム)以来、10余年ぶりのこととなる。  レニンは、アンジオテンシノーゲンに作用し、アンジオテンシンⅠを遊離させる。アンジオテンシンⅠは、ACEによりアンジオテンシンⅡに変換され、アンジオテンシンⅡが受容体に結合することで昇圧作用を示す。つまり、レニン阻害薬であるアリスキレンは、ACE阻害薬やARBよりも上流で、アンジオテンシンⅠの生成を抑制し、降圧効果を示す。ACE阻害薬のようにブラジキニンの分解は阻害しないため、空咳の副作用を考慮する必要はないものと考えられる。  アリスキレンの国内外の臨床試験では、1日1回の投与で24時間以上の持続的で安定した血圧コントロールを示しており、プラセボと同等の安全性と良好な忍容性が確認されている。さらに、単独投与での有効性に加え、ほかの降圧薬(サイアザイド系利尿薬など)との併用でも、降圧効果が認められている。  また現在、アリスキレンでは、降圧効果とは独立した臓器保護作用について検討する複数の大規模な臨床試験プログラムが進行している。ACE阻害薬やARBとは異なり、アリスキレンがレニン活性やアンジオテンシンⅠ濃度を上昇させないことが、RA系薬としての臓器保護効果にどのように影響するのか、試験結果が注目される。  既に海外では、2007年3月に米国で、同年8月に欧州連合(EU)で承認されており、現在までに世界70カ国以上で承認されている。今後、アリスキレンは日本でも、降圧薬として幅広く使用されていくものと予想される。  使用に当たっては、国内の臨床試験で、25.9%に何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が認められていることに十分留意しておく必要がある。主な副作用は、頭痛(1.3%)、高尿酸血症(1.3%)、下痢(1.0%)、ALT増加(2.4%)、γ-GTP増加(1.6%)、血中トリグリセリド増加(1.4%)などであり、重大な副作用として血管浮腫、高カリウム血症が報告されている。