アルコール性肝炎に対するプレドニゾロンまたはペントキシフィリン
背景
アルコール性肝炎は,多量のアルコールを長期間摂取してきた患者に生じる,黄疸と肝障害を特徴とする臨床症候群である.重症患者の短期死亡率は 30%を超える.プレドニゾロンとペントキシフィリン(pentoxifylline)は,いずれも重症アルコール性肝炎の治療薬として推奨されているが,その利益は依然として不明である.
方法
プレドニゾロンとペントキシフィリンの治療効果を評価するために,2×2 要因デザインを用いた多施設共同二重盲検無作為化試験を実施した.主要評価項目は,28 日の時点での死亡率とした.副次的評価項目は,90 日および 1 年の時点における死亡または肝移植などとした.臨床的にアルコール性肝炎または重症アルコール性肝炎と診断された患者を,ペントキシフィリンにマッチさせたプラセボと,プレドニゾロンにマッチさせたプラセボを投与する群,プレドニゾロンと,ペントキシフィリンにマッチさせたプラセボを投与する群,ペントキシフィリンと,プレドニゾロンにマッチさせたプラセボを投与する群,プレドニゾロンとペントキシフィリンを投与する群のいずれかに無作為に割り付けた.
結果
1,103 例を無作為化し,主要評価項目の解析には 1,053 例のデータを利用しえた.28 日死亡率は,プラセボ+プラセボ群 17%(269 例中 45 例),プレドニゾロン+プラセボ群 14%(266 例中 38 例),ペントキシフィリン+プラセボ群 19%(258 例中 50 例),プレドニゾロン+ペントキシフィリン群 13%(260 例中 35 例)であった.ペントキシフィリン投与患者における 28 日死亡率のオッズ比は 1.07(95%信頼区間 [CI] 0.77~1.49,P=0.69)であり,プレドニゾロン投与患者においては 0.72(95% CI 0.52~1.01,P=0.06)であった.90 日および 1 年の時点で評価した項目に群間で有意差は認められなかった.重篤な感染症は,プレドニゾロンを投与した患者の 13%で発現したのに対し,プレドニゾロンを投与しなかった患者では 7%で発現した(P=0.002).
結論
アルコール性肝炎患者では,ペントキシフィリンを投与しても生存率は改善しなかった.プレドニゾロンは,有意水準には達しなかったものの 28 日死亡率の低下に関連し,90 日および 1 年の時点での転帰の改善には関連しなかった.(英国国立健康研究所医療技術評価プログラムから研究助成を受けた.STOPAH 試験:EudraCT 登録番号 2009-013897-42 および Current Controlled Trials 登録番号 ISRCTN88782125)
下記より抜粋
https://www.nejm.jp/abstract/vol372.p1619