アルツハイマー病の実験薬が自閉症の子供の役に立つかもしれない
テルアビブ大学(TAU)の人間分子遺伝学および生化学部のイラナ・ゴズ 教授が率いる広範な国際研究により、7歳の自閉症児の死後の脳から採取された組織にアルツハイマー病患者に典型的に見られるタウタンパク質の沈着が見つかりました。
子供はADNP症候群、つまり脳の発達に不可欠なADNPタンパク質の欠乏や機能不全を引き起こす突然変異を患っていました。
これらの発見に照らして、研究者らは、元々アルツハイマー病のために開発されたNAPと呼ばれる実験薬を、アルツハイマー様の症状を誘発する変異を伴うADNP症候群のモデルの神経細胞でテストを行いました。
実験は成功し、損傷した神経様細胞は正常な機能に戻りました。
この研究はTranslational Psychiatry誌で7月13日に発表されました。
ゴズ 教授は、この研究はクロアチアで死亡したADNP症候群の7歳の少年の脳から採取された組織に基づいていると説明しています。
「死後のADNP症候群の脳組織をADNP症候群でない子供の脳の組織と比較したところ、アルツハイマー病を特徴づける病理であるタウタンパク質の沈着がADNPの子供に見つかりました。」
とゴズ 教授は述べています。
その後、研究者たちは、NAPと呼ばれる候補薬を使用して、死亡した子供の突然変異と同様のADNP突然変異を持つ損傷した神経様細胞を「治療」しました。
NAPはゴズ教授の研究室で開発され、元々はアルツハイマー病の治療に使用することを目的としていました。
「NAPは実際には通常のADNPタンパク質の短い活性フラグメントです。」
とゴズ教授は言います。
ADNP変異を持つ神経細胞にNAPを追加すると、タウタンパク質が神経細胞骨格に適切に結合し、細胞は正常な機能に戻りました。
「NAP治療がADNP障害を伴うニューロン様細胞モデルの正常な機能の回復に成功しているという事実は、ADNP症候群および自閉症を含む、深刻な症状の治療薬として使用される可能性があることが期待されます。」
とゴズ教授は続けます。
「さらに、自閉症に関連する他の遺伝性疾患は脳のタウ病理によって特徴付けられるので、これらの症候群に苦しんでいる人々も、将来的にNAP治療から利益を得ることができることを願っています。」
CP201とも呼ばれる、NAPは、米国食品医薬品局によって「希少医薬品」として分類されており、Coronis Neurosciences社を通じてADNP症候群の子供を対象とした臨床試験の準備段階にあります。
研究の別の段階で、研究者らはADNP症候群を引き起こす変異の影響についての理解を広げようとしました。
これを行うために、彼らは亡くなった子供の組織から遺伝物質のmRNA(メッセンジャーRNA)を抽出し、mRNAによってコード化された同じ子供で約40個のタンパク質の発現分析を行いました。
ADNP症候群の他の3人の子供から採取された白血球のタンパク質発現を決定するために、完全な遺伝子配列決定も行われました。
詳細な研究は、高度なバイオインフォマティクス計算ツールを使用して、遺伝子配列決定で得られたすべてのデータに対して行われました。
データは、健康な個人からのタンパク質発現データのオンラインデータベースと比較されました。そして、症候群の子供に共通していたこれらのタンパク質の通常の外観とは非常に異なるさまざまな特性が明らかになりました。
ゴズ教授は、次のように結論付けています。
「これらの発見の重要性は、ADNP症候群を引き起こす変異がさまざまな必須タンパク質に損傷を与えることであり、そのいくつかは、とりわけタウタンパク質に結合し、その機能も損なうことです。これにより、ADNP症候群の子供の脳やその他の組織に様々な病理学的影響が生じます。
その1つがアルツハイマー病の特徴であることが知られているタウ沈着物の形成です。
「私たちが本研究を通じて蓄積した膨大で深い知識は、さらに広範囲で多様な研究への扉を開きます。私たちは最終的に、遺伝子変異に起因する自閉症の子供たちを助ける薬を開発するという目標に到達することを望み、そうできると信じています。」
【以下のリンクより引用】
Experimental drug for Alzheimer's may help children with autism
Medical Xpress