イサツキシマブがRRMM患者の生存率を改善する
潜在的な治療用抗体であるイサツキシマブは、ポマリドミドとデキサメタゾンからなる標準治療を受けている再発難治性多発性骨髄腫(RRMM)患者の生存率を向上させることができます。
このデータは、シカゴで開催された2019年米国臨床腫瘍学会で、『再発/難治性多発性骨髄腫患者における、イサツキシマブ、ポマリドミド、
および低用量デキサメタゾンと、ポマリドミドおよび低用量デキサメタゾンとを比較した第III相無作為化非盲検多施設試験』
というタイトルのプレゼンテーションにて発表されました。
製薬会社サノフィによって開発されたイサツキシマブは、CD38と呼ばれるタンパク質を標的とするモノクローナル抗体です。
このタンパク質は、ほとんどの多発性骨髄腫細胞に発現し、それを標的にすることによる治療はアポトーシスの誘導(プログラムされた細胞死)や、
体の免疫系での破壊を目的とした癌細胞の標的化など、いくつかの異なるメカニズムを介して細胞死を誘導することができます。
ICARIA-MM第3相試験(NCT02990338)は、24カ国96軒の施設において、再発/難治性多発性骨髄腫(RRMM)の患者307人が登録されました。
参加者は、レブリミド(レナリドミド)とプロテアソーム阻害剤を単薬か、または組み合わせて投与されよる少なくとも
2サイクルを含む平均3サイクルの治療サイクルを試験までに受けていましたが、疾患は進行し続けていました。
参加者は、最初の4週間は、ポマリドミドとデキサメタゾンによる標準治療(対照群)、またはこの標準治療薬とイサツキシマブ注射(体重1kgあたり10mgの用量)のいずれかに無作為に割り付けられました。
患者の病気が再発したり進行せずに死亡もないという無増悪生存期間を18か月間というのが主な目標でした。
1年弱(11.6ヶ月)の平均追跡期間では、イサツキシマブで治療された患者の無増悪生存期間の平均は11.53ヶ月でしたが、
一方で、ポマリドミドとデキサメタゾン単剤で治療を受けたグループでは6.47ヶ月でした。
イサツキシマブ併用群における全体の奏効率もまた、対照群の35%と比べて、60%と、有意に大きかったことがわかりました。
追跡期間が短いため、全生存率を確定することはできませんでしたが、研究者らはイサツキシマブ群の改善傾向を示しました。
この治療効果は、複数のサブグループ分析にわたって一貫していました。
例えば、研究対象集団の平均年齢は67歳のところ、研究者が75歳以上の患者のみを調べたときに変化はありませんでした。
ハーバード大学医学部の主任研究員であるポール・リチャードソン博士は、次のように述べています。
「イサツキシマブとポマリドミドおよびデキサメタゾンを併用すると、ポマリドミドとデキサメタゾンの単剤治療と比較して、
進行または死亡のリスクが40%も劇的に減少しました。」
「この結果は注目に値するものです。なぜなら、この試験には、治療が困難で再発し、難治性である疾患を持つ患者集団が含まれていたからです。
これは私の考えですが、現実的な治療として実践され得ます。」
重度(グレード3以上)の有害事象が、イサツキシマブ群では86.8%、そして対照群では70.5%報告され、各群の7.2%と12.8%の患者が、
そういった有害事象のために試験を中止しました。
さらに、各群の患者の7.9%と9.4%は、それぞれ重篤な有害事象のために亡くなりました。
報告されている一般的な副作用には、感染症、注射部位での反応、好中球減少症(免疫細胞の一種である好中球数の減少)があります。
【以下のウェブサイトより引用】