イブプロフェンやナプロキセンが、乳がんリスクの高い女性に役立つ可能性
- 研究者らは、乳がんリスクが高い女性は、アドビルやアリーブなどの抗炎症薬を服用することで、リスクを減少できる可能性があると述べています。
- 米国では毎年約100万人の女性が、がんリスクを高める疾患である良性乳房疾患の診断を受けています。
- 専門家はこの研究は重要である物の、実際本当にリスク低下作用があるかどうかを判断するためにはさらなる研究が必要だと述べています。
乳がんのリスクが高い女性は、イブプロフェンまたはナプロキセンを服用することで、この病気を発症するリスクを可能性を最大40%下げることができます。
上記は、週末にテキサスで開催されたアントニオ乳がんシンポジウムで、メイヨークリニックの研究者が伝えた内容です。
科学者は、イブプロフェン(アドビル)とナプロキセン(アリーブ)が、良性乳房疾患の診断を受けた後女性のその後の生存率を改善できる可能性があると述べています。
米国では毎年約100万人の女性が、乳がん発症リスクを高める疾患の診断を受けています。
ジェイソン・コーヘン医師はHealthlineの取材に対し、「これは驚くべき発見である」と述べています。
彼は、セイダース-シナイ病院のロサンゼルス外科グループにある乳房センターの共同ディレクターおよび腫瘍外科医を務めています。
「乳がんリスクの高い患者のリスクを、ほぼ半分にまで減らせるとは。しかし、データが示され本当の長期的な効果が見られるまでは、この結果が意味する所について述べるのは困難です。」
アメリカがん協会によると、良性(非がん性)乳病疾患は、一般的であるといいます。
当団体は、乳房変化のほとんどは良性であり、良性疾患は命に関わるものではないと述べています。
しかし一部は、今後乳がんを発症するリスクの上昇と関連しており、症状が似ていることがあります。
<研究でわかったこと>
研究者らは、1992年から2001年の間にメイヨークリニックで良性女房の生検を受けた女性と、女性が服用した薬の種類、および期間について調べました。
また研究者らは、初回の生検後、誰が乳がんを発症したかについても調べました。
「イブプロフェンまたはナプロキセンを使用したと報告した女性の乳がんリスクは約40%減少しましたが、アスピリンを使用したと報告した女性の乳がんリスクに減少はみられませんでした。」と、エイミー・デグニム医師はプレスリリースで述べています。
彼女はメイヨークリニックの腫瘍外科医です。
デグニム氏は、この研究はより多くの臨床研究が行われる必要性を示唆していると述べました。
彼女は、この研究は臨床研究ではなく、全ての女性がこれらの薬を服用すべきではないと警告しています。
コーエン氏は、投与量が重要であると述べています。
「推奨用量が週に1回なのか、1日1回なのかわかっていません。」と、コーエン氏は言います。
「投与量がわかったら、次はリスクと利益の比率を測るため、起こり得る副作用について調べる必要があります。」
「がん全てが同じように振る舞うわけではなく、類似したがんでさえも、人や環境が異なれば異なる動作をすることを覚えておくことが重要です。」と彼は述べました。
「NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)の長期的な使用には、明らかにマイナス面があります。出血や潰瘍、さらには腎不全の発症リスクがあります。」
利益がリスクを上回るかどうかを尋ねられたとき、コーエン氏は、「リスクは全くもって必要な薬の使用期間と用量次第だ」と述べています。
<有効性の判断>
レスリー・バーンスタイン博士は、カリフォルニア州ドゥアーテにあるシティオブホープ総合がんセンターの教授を務めています。
彼女は、アドビルやアリーブといった市販薬の有効性を判断するのは難しいと警告しています。
バーンスタインはHealthlineへの取材に対し、次のように答えています。
「これらは一般に痛みの緩和に使用され、使用頻度が散発的である場合があるため、調査員の質問方法によって使用量が決定されている可能性があります。」と
「乳がんリスクに見られたような(NSAIDsの)効果は、年齢や肥満度指数もしくは体重によって異なる可能性があります。また各薬の使用パターンは、地域や国、使用された時期によって異なることがあります。アスピリンはずっと前からあります。最近では市販薬の種類が増え、新しい市販薬の人気が高まったことで、アスピリンの使用は減りました。」
彼女は、以前の研究ではアスピリンによってがんリスクが低下することが示されていると述べました。
「研究方法や被験者の種類、女性が罹患した乳がんの種類によって異なる調査結果が出たのでしょうか?」と彼女は述べています。
そうであったとしても、彼女は、最近の調査結果を軽視すべきではないと述べています。
「メイヨークリニックの研究結果は重要です。」と彼女は言います。
「NSAIDsが乳がんリスク低下に役立つ可能性を示す文献がまた追加されました。」
<抗炎症薬とがん>
デニス・R.ホルメス医師は南カリフォルニアのアドベンティストヘルスで乳がん外科医および研究者を務めています。
彼は、抗炎症薬を服用する様々な理由や頻度によって、乳がん発症リスクの高い女性に効果があると述べています。
「他の症状(関節炎など)を治療するために定期的にイブプロフェンやナプロキセンを服用することで、一部のがんには十分な予防効果があると推測できます。」と彼は言います。
「この発見は最終的には、公式な設計に役立つ仮説を生む発見になると考えています。前向き研究により、各抗炎症薬の用量と使用頻度を特定します。」
研究の結論にたいしては様々な意見がありますが、抗炎症薬と乳がんの関連に関する更なる研究に繋がる可能性があるという点では、皆同意しています。
オーストラリアにあるメルボルン大学の上級臨床講師であるアレックス・ポリヤコフ博士は、Healthlineへの取材に対し、次のように述べています。
「この調査結果が現在の乳がん予防戦略に実質的な影響を与える可能性は低いでしょう。」
「NSAID使用が広まるにつれて、全体的な罹患率や死亡率が増加する可能性があるため、利益がリスクを上回るかどうかも不明です。乳がんリスクが低下したとすれば、その効果を生んだメカニズムが存在するはずであるという点において、この研究は重要です。このメカニズムが解明でき、
NSAIDに伴うリスクなしに新しい治療で再現することができれば、非常に重要な成果となるでしょう。」
出典 2019年12月16日更新 healthline 『Advil, Aleve May Help Women with a Higher Risk of Breast Cancer』(2019年12月31日に利用)
https://www.healthline.com/health-news/breast-cancer-risk-advil-aleve