エンパグリフロジンは2型糖尿病のアジア人成人において腎機能を保護
『Journal of Diabetes Investigation』誌に掲載された調査結果によると、SGLT2阻害剤のエンパグリフロジンは、アジアにおいて、2型糖尿病および心血管疾患を有する成人での腎障害の悪化を制限し、腎機能の喪失を遅らせることができます。
「2型糖尿病は西欧諸国の疾患として頻繁に認識されており、アジア諸国における糖尿病の発生率は今後数年間で増加すると予測されることが広く知られていますが、実際の発生率がアジア地域全体ですでに高いことはあまり認識されていません。」
と、東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝性疾患学科の門脇貴志博士と彼の研究グループは記しました。
「2型糖尿病のアジア人は他の人種グループよりも[糖尿病性腎疾患]のリスクが高いことを示唆する証拠が増えています。あいにく、[糖尿病性腎臓病]を予防または治療するための選択肢は限られています。追加治療の必要性が差し迫っていることを考えると、SGLT2阻害薬として知られている2型糖尿病薬が腎臓の負担を制限する可能性があるということのメリットに大きな関心が寄せられています。」
EMPA-REG OUTCOME試験において自分をアジア系民族と認識する参加者のサブセット(n =
1,517、平均年齢61歳、26.3%、平均HbA1c、8.07%、平均推定糸球体濾過量73.9 mL / min / 1.73 m2)が、門脇博士らによる事後分析で使用されました。
EMPA-REG OUTCOME試験の参加者は全員、2型糖尿病、BMIが45 kg / m 2以下、何らかの形のCVDおよびeGFRが30 mL / min / 1.73 m 2以上でした。
当初の研究では、香港、インド、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、スリランカ、台湾、タイのセンターから参加者として募集されましたが、自分はアジア系民族であると自己申告を行った参加者もこの分析には含まれていました。
参加者は、無作為にエンパグリフロジン(ベーリンガーインゲルハイム社:商品名ジャディアンス)を10 mg、および25 mgまたはプラセボに割り当てられました。
血清クレアチニンおよび尿アルブミン対クレアチニン比は、無作為化時および4週、12週、28週、および52週、ならびに研究終了までの14週ごとおよび終了後30日の経過観察時に測定、調査がなされました。
門脇博士らは、アジアの参加者のサブセットにおける腎臓転帰の事後分析を実施しました。
具体的には、偶発的または腎疾患の悪化、マクロアルブミン尿症への進行、血清クレアチニンの組成倍増および経時的な腎臓機能の変化などが調査されました。
アジアの民族性を持つ参加者での、観察期間の中央値は3.3年でした。
プラセボ群の参加者の21.8%と比較して、エンパグリフロジンを服用している参加者の15.5%において腎疾患の悪化が報告されました(HR = 0.64; 95%CI、0.49-0.83)。
研究者らはまた、エンパグリフロジン群の参加者の13.7%がプラセボ投与群の19.3%と比較して、マクロアルブミン尿症に進行したことを見出しました(HR = 0.64、95%CI、0.49-0.85)。
さらに、エンパグリフロジン群の参加者の1.8%が、45mL
/分/1.73m2以下のeGFRを伴う血清クレアチニンの倍増が見られたと述べました。
研究の192週間の間の腎臓機能に関しては、研究者らはエンパグリフロジン群がプラセボ群と比較してeGFRが5 mL / min / 1.73 m 2増加が見られたことが報告されました。
エンパグリフロジンでの治療はまた、12週目、および164週目での検査において、尿中アルブミン対クレアチニン比の減少をもたらしました。
「これらのEMPA-REG OUTCOMEによるアジア人患者の腎臓転帰についての分析は、研究が行われた様々な結果においてエンパグリフロジンの改善を示し、その結果は全試験集団での結果と一致しました。」と研究者らは記しています。
「これらの結果は、エンパグリフロジンが、2型糖尿病患者におけるアジア人種に関連する[糖尿病性腎疾患]による早期罹患率および死亡率の負担を軽減する可能性を示唆しています。」
【以下のウェブサイトより引用】