シロシビンを用いた幻覚療法が癌や抑うつ症状を軽減することが判明
第 II 相臨床試験の結果は、シビレタケ属という特定のキノコに含まれる幻覚性化学物質であるシロシビンが、がんや大うつ病患者に効果がある可能性があることを示しています。 シロシビンで治療を受けた治験参加者は、うつ症状の軽減を経験しただけでなく、治験終了時に行った調査でこの治療法について高く評価していました。
この研究結果は、Cancer 誌のオンライン版で2 つの記事で掲載されています。
シロシビンは、脳内のセロトニン受容体の特定のサブタイプに結合することにより、気分、認知、知覚に変化を引き起こす可能性があります。
シロシビンは現在医療用途が認められておらず、乱用の可能性が高いと定義されている「スケジュール I 薬」に分類されており、米国食品医薬品局によって臨床使用は承認されていません。
しかし、複数のランダム化比較試験で、大うつ病性障害を治療するために、訓練を受けた療法士による心理的サポートとシロシビンを組み合わせた治療法であるシロシビン支援療法の安全性と潜在的な有効性が実証されています。
さらに、進行中の研究では、不安、依存症、心的外傷後ストレス障害など、他のさまざまな精神的健康状態に対するシロシビン支援療法の使用が検討されています。
がんや大うつ病を患う成人を対象としたこの最新の第II相非盲検試験では、メリーランド州ロックビルにある「サンストーン・セラピーズ(Sunstone Therapies)」からの参加者30人が、合成シロシビン25mgの単回投与に加え、セラピストとの1対1のセッションとグループ療法によるサポート治療を受けました。
「この研究は、グループ療法によって差別化されました。3~4人の患者のコホートで、同時に行われ、各自隣接する部屋で、治療者と患者の比率が1対1の状況で、25mgのシロシビンを用いて同時に治療されました。コホートでは治療の準備をするだけでなく、グループではシロシビン治療後の統合セッションも受けました。」
と、筆頭著者であるサンストーン・セラピーズのマニッシュ・アグラワル医学博士は説明しました。
登録された参加者は、ベースラインで中等度から重度のうつ病のスコアを保持していました。
8週間の治療後、アグラワル博士と彼の同僚は、患者のうつ病重症度スコアが平均19.1ポイント低下したことを観察しました。これは、大多数にうつ病が見られなくなったことを示すスコアの大きさです。
さらに、参加者の80%には治療に対する持続的な反応が見られ50%が1週間後にうつ症状の完全な寛解を示しそれは8週間持続しました。
吐き気や頭痛などの治療に関連した副作用は一般に軽度でした。
「私は長年腫瘍医として、腫瘍だけでなく人間全体を治療するがん治療を提供できないというもどかしさを経験してきました。」
とアグラワル博士は述べました。
「これは小規模な非盲検研究であり、さらなる研究が必要ですが、可能性は大きく、病気による深刻な精神的な症状と闘う何百万ものがん患者の救済につながる可能性があります。」
アグラワル博士は、ダナ・ファーバーがん研究所のイヴァン・ボーサン修士医学博士が主導し、終了調査で試験に参加した患者からの意見を集めた研究の主著者のひとりでもあります。
研究参加者は概して前向きな経験を述べました。
安全性の観点から言えば、グループの一員であることで恐怖が和らぎ、治療に取り組む準備へ向かい心の整備ができたようです。
治療効果に関しては、被験者はグループとつながることで経験が深まり心が豊かになり、最終的には自己超越とお互いへの思いやりを感じました。
また、個人セッションとグループセッションの両方を使用した場合、さまざまな方法で治療支援がされていることがわかりました。
たとえば、個人セッションとグループセッションを実施することで、セラピーに「一体感」を加えながら、親密に内省的なプロセスを維持できるようになりました。
「血液学者、緩和ケアの医師、そして、研究者として、治験に参加した被験者の改善の大きさと治癒過程の深さを確認できたことは、非常に感動的で励みになりました。
参加者は圧倒的にシロシビンの経験について肯定的な感情を表明しました。
支援療法を行うと同時に、それが行われるような環境の重要性が強調されました。」
とボーサン博士述べました。
「多くの人が、シロシビンを使用後 2 か月以上が経過し、自己のがんや終末期に対処する準備が整ったと感じ、生活と幸福に継続的な変化が起きていると述べています。」
この介入が臨床現場に導入されるまでには、その効果を他の治療法や対照群を持つプラセボとの比較を用いて更に多くの患者を対象とした追加研究が行われる必要があります。
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