スタジアムで設置が義務付けられたAEDはなぜ観客での使用が広がらない?
スポーツ選手は老若男女とも心停止に陥る可能性があるため、一部の州ではジムやスタジアム、その他のスポーツ施設や会場での自動体外式除細動器(AED)の設置を義務付けています。
しかし、新しい研究によると、スポーツの競技会場では観客の心停止に対するAEDの使用は、州がこれらの法律を制定した後もあまり改善されていないことが判明しました。
結論としては、「立法的な取り組みだけでは、観客によるAEDの使用を改善するのに十分ではない可能性がある」と、JAMA Internal Medicine誌に1月2日に掲載された研究の著者らは主張しています。
ちょうど1年前、アメリカンフットボール・バッファロー・ビルズのダマー・ハムリン選手がフィールド上で倒れたことなど、最近の注目を集めた事件により、若いアスリートでの心停止に注目が集まっています。
ハムリン選手は幸運にも心肺蘇生法と迅速なAEDの使用で手当をうけ、その後完全に回復しました。
多くの州では、同様の危機が発生した場合に備えて、競技会場の近くにAEDを設置する法律を制定しています。
この新しい研究は、ダラスのテキサス大学サウスウェスタン医療センターの心臓専門医であるアーメド・コルカイラ博士が主導しました。
彼の研究チームは、心停止症例と生存に関する国家登録簿からのデータを分析し、そのような義務がある州とない州でのAED が使用された頻度を追跡しました。
彼らは2020年以前にそのような法律が施行されていた13州と、施行されていなかった27州に焦点を当てました。
2013年から2021年までに発生した心停止の症例は合計4,145件でした。
研究者らは運動施設へのAEDの設置が義務付けられている州では、心停止が発生した際に観客がAEDを使用したのはわずか19%であることを発見しました。
これは、そのような法律のない州で観察された18.2%よりわずかに高かったようです。
生存率も同様でAEDの設置が義務付けられている州では44.5%、非設置の州では45%だったことをコルカイラ博士のグループは発見しました。
AEDの設置が義務付けられている「最もパフォーマンスの高い」州であっても、機器が使用されたのは3分の1未満(28.8%)だったことが報告書で明かになっています。
テキサス大学のチームによると、危機的状況である場合、単に敷地内のどこかにAEDを設置することを義務付けるだけでは十分ではない可能性があります。
これらの機器は簡単に見つけられる場所に設置されている必要があり、そのためにはGPSによる位置の追跡、より良い標識の導入、そしてAEDの見つけ方と使い方についての「施設スタッフと、一般の観客へのの継続的な教育」が必要になるかもしれないとコルカイラ博士のグループは述べました。
「公共の場で除細動を行うための障壁を克服するには、さらなる努力が必要です。」
と研究者らは結論付けています。
【以下のリンクより引用】
Defibrillators are now mandatory at some gyms and stadiums. So why aren't more people using them?
Medical Xpress
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