ストレス潰瘍について知っておくべきこと
ストレス潰瘍は上部消化管に痛みを引き起こします。
胃腸の内層を傷つけ、痛みや胸焼け、さらには感染の危険性を高めます。その症状は軽度の刺激から重度の出血まであります。
潰瘍は、集中治療室で働く人など、身体的ストレスが非常に大きい人々の間でよく見られます。
医師はストレス潰瘍を「ストレス関連粘膜損傷」と呼ぶこともあります。
この治療の主な目的は、胃酸を減らし、重篤な感染症、出血やショック症のリスクを減らすことです。
原因
ストレス性潰瘍は、ストレスによって悪化する「消化性潰瘍」と同じではありません。
どちらも胃や腸の内壁に痛みを引き起こしますが、胃潰瘍とも呼ばれる典型的な消化性潰瘍は、薬や感染症が胃腸の内壁を弱め、徐々に症状が出現する傾向があります。
ストレス潰瘍は、通常、生理学的ストレスにより突然起こります。
重度の怪我や感染症によるストレスなどの身体的に起因するストレスと同様に、酸性食品によっては潰瘍が悪化することがあります。
これはストレスが胃酸を増加させるためと考えられます。
ストレス潰瘍は重度の疾患を持つ人々に影響を与える傾向があるため、生命を脅かす可能性がありますが、
一方でストレスによって悪化する胃潰瘍が深刻になることは滅多にありません。
胃は自然に食べ物を消化するのを助けるために酸を生産します。
胃の酸性環境が変化したり、酸性になり過ぎると、潰瘍の症状が現れることがあります。
重度の生理的ストレスを受けている人では、潰瘍は体のpH(水素イオン濃度指数)に変化が生じることがあります。
ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)感染は、ストレス性潰瘍を含むすべての潰瘍のリスクを高めます。
まれに、非常に重大な心理的ストレスがストレス潰瘍を引き起こすことがあります。
例えば、2018年の症例報告では、幼女の潰瘍の治療を詳述しています。
その子には1ヶ月間、託児所に行くことを拒否した後に潰瘍が現れました。医師たちは、ストレスがおそらく潰瘍を引き起こしたと推測しています。
健康や生活習慣の要因によっては、胃や腸の内層が損傷する危険性が高まり、これらの要因により、ストレス関連潰瘍を含む潰瘍が発症する可能性が高くなります。
H.ピロリ感染の治療
非ステロイド系抗炎症薬やイブプロフェンなどNSAIDSを用いての治療となります。
深刻な怪我や健康上の緊急事態に直面している人々においては、潰瘍の既往歴もストレス性潰瘍のリスクを高める可能性があります。
症状
ストレス性潰瘍は一連の症状を引き起こします。
軽度の潰瘍である場合は全く症状を引き起こさないかもしれませんが、重度の潰瘍は激しい痛みと深刻な合併症を引き起こす可能性があります。
ストレス性潰瘍のある人はそれがすでに病気になっているので、潰瘍の症状と他の病気の症状とを区別することは困難であるかもしれません。
ストレス潰瘍の症状は次の通りです。
- 上部胃の痛み
- 食べ物に左右される痛み
- 膨満感や異常な満腹感
- 吐き気や嘔吐
- 息切れや肌が青白いなどの貧血の症状
大量に出血し失血が危険なレベルになる人もいますが、重傷である場合は、この失血は命にかかわることがあります(急速出血性潰瘍)。
急速出血性潰瘍の症状には以下のものがあります。
- 赤い嘔吐物またはコーヒー粕に似た嘔吐物
- 血便やあずき色の便
- タール便
- ふらつきや失神
治療方法
潰瘍の診断には医師により消化管の検査が行われます。
潰瘍の確認には内視鏡( 長く細い管)が使用される場合があります。
また、潰瘍の主な危険因子であるピロリ菌を調べるために、血液検査、呼気検査、または検便を行うこともあります。
正しい治療法は潰瘍の重症度とそれが引き起こす症状によって異なります。
深刻な出血のある患者へは輸血が必要な場合があります。
治療の主な目的は、胃酸を減らし、重篤な感染症、出血、ショック症状のリスクを減らすことです。
治療薬の選択肢
プロトンポンプ阻害薬(PPI)
これは胃酸を減らす薬のグループです。 PPIを服用している人はガストリン濃度が上昇しますが、服用を中止すると胃酸が増加する可能性があります。
したがって、医師が推奨する期間は治療を続けることが重要です。
ファモチジンやシメチジンなどのヒスタミン遮断薬
特定の抗ヒスタミン薬は抗コリン作用薬です。これらはアセチルコリンの活性に対抗します。
アセチルコリンは胃に酸を放出させるプロセスを刺激する神経伝達物質です。
予防
ストレス潰瘍は、緊急治療や集中治療の場面では非常に一般的です。
重度の火傷または頭部外傷で入院した人々の75%以上が、負傷後72時間以内にストレス性潰瘍を発症します。
そのため、一部の病院では、潰瘍を予防し、定期的にそれらをチェックするための薬が患者へ投与されます。
ストレス性潰瘍を予防薬は、潰瘍の治療薬と同様です。
PPIとヒスタミン遮断薬は、ストレス性潰瘍のリスクを減らす可能性があります。
医療誌『Cleveland Clinic Journal of Medicine』では、入院中の患者全員に予防的治療薬を与える必要がないと警告しています。
不必要な予防治療は費用と合併症を増加させます。
アメリカ健康システム学会薬剤師は、以下の基準のいずれかを満たす患者には、予防的治療を勧めています。
- 血液希釈剤を使用している
- 48時間以上、換気装置を使用している
- 潰瘍の既往歴がある
- 過去1年間に消化管の出血があった
- 全身感染症または敗血症がみられる
- 1週間以上、継続して集中治療室にいる
- 6日以上の消化管出血が見られる
- 1日あたり250mg以上のヒドロコルチゾンを服用している
過去には、医師は潰瘍の既往歴のある人たちには普通の食生活をするように指導していましたが、新しい研究はこれが必要ではないことを示しています。
特定の食品を食べた後に症状が悪化する人もいますが、辛い食べ物は潰瘍を引き起こしません。
終わりに
ストレス性潰瘍を発症する危険性がある人々は、感染症、臓器不全、または頭部外傷などの深刻な健康問題を抱えていることが多いものです。
ストレス潰瘍は深刻な炎症や出血を引き起こし、それが他の疾患をも複雑にします。
これは、ストレス性潰瘍が従来の消化性潰瘍よりも危険であることを意味しています。
ストレス性潰瘍を発症する危険性があるほとんどの人はすでに入院していますが、もし、最近入院し、潰瘍の症状を発症した場合は直ちに医師に連絡してください。
すべての深刻な潰瘍が直ちに深刻な症状を引き起こすわけではありませんので、医師へ発生したあらゆる潰瘍の症状を伝えてください。
医師の見解は、潰瘍の程度や患者の全体的な健康状態など、いくつかの要因によって異なります。
潰瘍で急激に出血した場合はそれが、生命を脅かす失血となる可能性があります。そしてそれが治療を困難にする可能性があります。
しかし、正しい治療を行えば、ストレス潰瘍とそれを引き起こす問題の両方を解決し、病気から回復することができます。
【以下のウェブサイトより引用】