ノーベル賞・大村さんの抗寄生虫薬、肝内胆管がんを抑制
九州大生体防御医学研究所の西尾美希助教、鈴木聡教授(ゲノム腫瘍学)らの研究グループは、抗寄生虫薬の「イベルメクチン」に、肝内胆管がんの原因遺伝子を抑制する働きがあるとの研究結果を発表した。
イベルメクチンは、今年のノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智・北里大特別栄誉教授らによって開発されたことで知られる。21日付の「米科学アカデミー紀要」(電子版)に掲載される。
肝臓がんの一種である肝内胆管がんは、有効な抗がん剤治療法が確立されていない難治性のがんだ。研究グループは、「MOB1」というがん抑制遺伝子を欠損させたマウスで、「YAP1」などのがんを増殖させる遺伝子が増え、肝内胆管がんを発症することを発見。YAP1の活性化を抑制する物質を探索したところ、イベルメクチンなど四つの物質が見つかった。人の胆管がん細胞を移植したマウスに、イベルメクチンを投与したところ、YAP1の発現が抑えられ、がんの増殖を抑えることができた。
イベルメクチンでがんを抑えるには、寄生虫治療薬として使われるよりも20~50倍の投与量が必要だった。研究グループは今後、安全性の検討や、低い濃度で効果を発する類似薬を用いた研究に取り組むほか、製薬企業と共同で新たな化合物の開発を進めている。
鈴木教授は、「より有効な治療薬の開発につなげたい」としている。
大村智・北里大特別栄誉教授の話 「イベルメクチンが胆管がんにも効くという成果は興味深い。イベルメクチンは寄生虫病以外にも、様々な治療に使える可能性があると思っていた。もし、胆管がんの治療薬として臨床応用されるようになれば、発見者としてもうれしい。」
参照記事: 読売新聞(2015年12月22日)