プレバイオティクスの入ったスナックは肥満の人の健康な腸内細菌を増やすことができるのか?
●食物繊維は、腸内に生息する微生物のコミュニティである腸内細菌叢へ影響を与え、それにより心血管疾患、2型糖尿病、および肥満の予防に役立つ可能性があります。
●しかし、典型的な西洋型の食生活は、これらの友好的な微生物が繁栄するために必要な繊維が足りません。
●マウスと人間での実験は、特定の種類の繊維を補給したスナック食品が腸内細菌叢を変化させ、広範な生理学的効果をもたらす可能性があることを示唆しています。
●果皮や、樹皮、殻など、製造業者が廃棄するであろう食品産業廃棄物から、将来のプレバイオティクススナック用の繊維を調達することが可能です。
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人間の腸内に生息する細菌、古細菌、ウイルス、真菌は、総称して腸内細菌叢と呼ばれますが、これは、肉体的および精神的な健康に大きな影響を及ぼします。
研究によると、この細菌叢の有益なものに栄養を与えることで、植物繊維は心血管疾患、2型糖尿病、肥満などの慢性的な健康状態を予防するのに役立ちます。
しかし、西洋型の食事は脂肪が多く、これらの植物繊維が不足していることがよくあります。
クッキーやチップスなどの不健康なスナックに食物繊維を補給するという考えは簡単に思えるかもしれませんが、食事、マイクロバイオームと個人の健康との関係は非常に複雑です。
ミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学医学部の腸内細菌叢と栄養研究センターの科学者たちは、プレバイオティクススナック製品の開発を目的としてこの関係を調査しています。
以前の研究で、彼らは安価ですぐに入手できる繊維が含まれた食品を特定しました。
それは、たとえば、通常は廃棄される果皮や、樹皮、殻などですが、肥満の成人が不足しがちな腸内微生物を活発にさせます。
ネイチャー誌に掲載された新しい研究では、これらの繊維の一部を補給したスナックがマウスと人間の腸内細菌叢にどのように影響するのかをテストし、生理学的な影響があるかといった可能性を調べました。
「スナックは西洋型の食生活では人気があるため、私たちは人々の食欲を促し、健康の多くの側面に影響を与える健康な腸内細菌叢をサポートする新世代のスナック食品の開発を支援するための研究に取り組んでいます。」
と、上級著者のジェフリー・I・ゴードン医学博士は述べました。
彼は、ワシントン大学医学部で、ゲノム科学およびシステム生物学のためのエジソンファミリーセンター(the Edison Family Center for Genome Sciences & Systems Biology)を率いています。
ベルビータ(belVita)、キャドバリー(Cadbury)、オレオ(Oreo)などのブランドを所有するスナック食品メーカーのモンデリーズ・インターナショナル(Mondelēz International)は、この研究に部分的に資金を提供しています。
無菌マウス
彼らの研究の最初の段階で、科学者たちは「ノトバイオティック」マウスを使用しました。
これらのマウスは無菌状態で飼育されているため、独自の腸内微生物がありません。
彼らはこれらのマウスの腸に肥満の人々から得た微生物を定着させ、次に太りすぎや肥満に関連するタイプの高脂肪、低繊維食を与えました。
次に、彼らは、エンドウ豆の繊維、オレンジの繊維、または大麦のふすまを補ったスナックをマウスの食事に連続的に導入しました。
各タイプのスナックの合間に、マウスは高脂肪食、低繊維食のみを食べるウオッシュ・アウト期間 を設けました。
この方法により、研究者は、糞便サンプル中の微生物DNAの分析を通じて行った、動物の腸内細菌叢の遺伝子プールに対する各繊維タイプの影響を追跡することができました。
彼らは、それぞれのスナックが、その特定の繊維を消化するための酵素を作るのに必要な遺伝子の量の増加につながることを発見しました。
おそらく、これは繊維が適切な遺伝子を持つ細菌に他のものよりも競争力を与えたためでした。
研究の第2段階では、研究者は太りすぎまたは肥満の12人の人間のボランティアを対象に同様の実験を行いました。
食事の違いによる変化を避けるために、ボランティアは飽和脂肪が多く食物繊維が少ない厳密に管理された食事を摂取しました。
その後、研究者らは、2週間の期間の中でその期間前、期間中、および期間後に、微生物叢の遺伝的変化を観察しました。その期間、被験者らはエンドウ豆の繊維を補給したスナックバーも食べました。
研究チームは、ボランティアの腸内細菌叢に、マウスで見たものと同様の変化が見られ、この繊維を消化するために必要な遺伝子の量が増加していることを観察しました。
最後に、科学者たちは、いくつかの異なる種類の繊維を含むスナックを食べることが、エンドウ豆の繊維だけを食べるよりも微生物叢に大きな変化をもたらすかどうかを調査しました。
14人のボランティアのグループは、最初に様々な繊維を組み合わせたスナックを2本食べました。その中には、タマネギ、バナナ、アスパラガス、アーティチョーク、チコリの根に自然に発生するエンドウ豆繊維とイヌリンが含まれていました。
その後、ウォッシュアウト期間を取った後、彼らはイヌリン、エンドウ豆繊維、オレンジ繊維、大麦ふすまの4つの繊維を含むスナックを食べました。
研究のこの部分では、食物繊維の種類が多いほど、繊維代謝に関与する細菌遺伝子の量が増えることが示されました。
これらの遺伝子的変化は、広範囲の重要な生理学的プロセスに寄与する血中のタンパク質レベルの変化と密接に関連していました。
たとえば、糖代謝や免疫、血液凝固、血管機能、骨や神経細胞の生物学に関与するタンパク質のレベルで大きな変化がありました。
チップス、バーやビスケットとして
全体的に、実験は、低繊維食をよく食べている人でさえも、腸内細菌叢が食物繊維の変化にどれほど反応するのかということを明らかにしています。
「基本的に、繊維は、チップ、バー、ビスケットなど、消費者に馴染みのあるさまざまなスナックに取り入れることができます。」
とゴードン博士は述べました。
この研究の限界の1つは、食物繊維を補給したスナックに加えて、ボランティアが厳重に管理された内容の食事を摂取していたことでした。
実生活での食事はもっと複雑です。
しかし、研究者たちは、人々が好きなものを食べることがでれば、彼らの予備的な発見がさえぎられるかどうかについてすでに調査しています。
「今後の研究では、通常の食事を摂取している参加者にスナック食品そのものを食べてもらう必要があります。」
とゴードン博士は述べています。
「この方法は、より現実的な消費者の食生活下で、腸内細菌叢と宿主の生理機能に対する繊維スナック製剤の影響についての頑健性と、用量依存性についての洞察を提供しています。」
と彼は付け加えました。
この研究では、被験者の血液に起こりうる生理学的変化による、タンパク質バイオマーカーが特定されました。
しかし、そのような変化が真に健康上の利益を示しているものであるかどうかは今のところ不明です。
たとえば、そのようなスナックが2型糖尿病や肥満の予防に役立つかどうかを明らかにできるのは、臨床試験だけなのです。
付随する記事の中で、イスラエルのレホヴォトにあるワイツマン科学研究所のアヴナー・レシェム氏とエラン・エリナフ氏は次のように結論付けています。
「これらの研究結果は、人間の食事においての微生物の寄与についての貴重な洞察です。これはおそらく、異なる食品成分、マイクロバイオームの調節、およびヒトの下流(腸内など)での健康に関連した結果との間の因果関係を評価する、長期のランダム化臨床試験につながるでしょう。」
【以下のリンクより引用】
Could prebiotic snacks boost healthy gut bacteria in obesity?
Medical News Today