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JapanRx / プロゲステロンで脳腫瘍に対する治療は可能

プロゲステロンで脳腫瘍に対する治療は可能

外傷性脳障害や脳卒中に対して検証済みのホルモン
プロゲステロンというホルモンが悪性度の高い脳腫瘍に対する治療に部分的に貢献する可能性があります。この腫瘍を発症させたマウスにおける高濃度プロゲステロンは、神経膠芽腫細胞(グリオブラストーマ細胞)を死滅させ、腫瘍増殖を制圧することができることを、研究者たちが発見しました。
この結果は、ステロイド生化学・分子生物学雑誌(Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology)に発表されました。
神経膠芽腫は、最も悪性度の高い脳腫瘍の一種であり、成人において最も多く見られ、診断後の平均余命は約15ヵ月と言われます。手術、放射線療法および化学療法を行うと、生存率を数ヵ月間、延ばすことが可能となりますが、それ以外の癌には効果的な標的治療を行っても神経膠芽腫患者の生存率を延ばすことはできません。
この論文の主執筆者はエモリー大学(Emory University)救急医学科の助教授のファヒム・アティフ(Fahim Atif)博士であり、今回の神経膠芽腫に関する研究結果はエモリー大学の研究者たちが外傷性脳傷害(後に脳卒中)に対する治療法としてのプロゲステロンを検討 して明らかにしたものです。アティフ、ドナルド・ステイン(Donald Stein) とその同僚は、20年間以上にわたり、外傷性脳傷害に対する治療法としてのプロゲステロンを研究してきました。その結果はステイン氏が初期観察で、 女性の方が男性よりも脳傷害から回復しやすいことを見出したことがわかりました。神経膠芽腫自体にも同様の傾斜が有り、男性の初期段階神経膠芽腫の発症率は女性より3倍も高 いのです。
これらの結果から、神経膠芽腫に対するプロゲステロンの使用をヒト臨床試験において検討する道を開くことができるものと考えられます。おそらく テモゾロミド(temozolomide)などの標準的治療薬剤との併用下で使用されます。
「しかし、まずは動物の脳にヒト腫瘍細胞を移植して検討する実験から着手する必要があります。」と ステイン氏は述べています。また、本研究チームは、臨床試験の設計に重要となり得る因子を特定しました。具体的には、プロゲステロンはすべての神経膠芽腫細胞株に対して毒性ではありませんが、その毒性は、腫瘍抑制遺伝子p53に変異があるかどうかによって依存する可能性があるというものです。
アティフ、ステ イン及び同僚シーマ・ユーセフの各氏は、生理的用量(低用量)のプロゲステロンが神経膠芽腫腫瘍細胞の増殖を促す一方で、高用量プロゲステロンは腫瘍細胞を死滅させるほか、健常細胞に対して非毒性のままとなることがわかりました。プロゲステロン拮抗薬RU486でも同様の効果を認めましたが、同著者らはプロゲステロンの方が健常細胞への毒性が低いという科学的根拠を示しています。細胞培養および動物モデルにおいて、プロゲステロンは、神経芽腫細胞(神経芽細胞腫は乳児に最も多く見られる)や、乳癌、卵巣癌、または、大腸癌の増殖を抑圧することも分かっています。

 

(記事元)
http://news.emory.edu/stories/2014/06/labland_progesterone_for_brain_cancer/campus.html