プロバイオティクス酵母について知ろう
ベルギーにあるVIB-KUルーベン微生物学センター(VIB-KU Leuven Center for Microbiology)のヨハン・テヴェレイン博士の率いる研究者はプロバイオティクス特性を持つ酵母であるサッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)が、酢の主成分である酢酸を独自に多量に生成することを 発見しました。
彼らはまた、この酵母の酢酸生産を変更させることで、この特性の遺伝子基礎を見つけることに成功しました。
このユニークなサッカロマイセス・ブラウディ特性を更に動物モデルで検証し、プロバイオティクス効果が見られた場合、それは、サッカロマイセス・ ブラウディのユニークなプロバイオティクス効力の遺伝的基礎を提供する最初の研究結果となります。
この研究はGenome Research誌に掲載されています。
神秘的な酵母についてのお話
1923年、フランスの科学者アンリ・ブラールは、東南アジアのフルーツのライチから謎の酵母株を分離しました。
そしてこの酵母は、予期せぬ強力なプロバイオティクス特性を持つことが判明しました。
サッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)と呼ばれるこの酵母は、下痢や他の腸疾患の治療のために商品化されています。
現在では、世界中の薬局で幅広い商品名で販売されています。
最近の全ゲノムDNA配列分析では、サッカロマイセス・ブラウディがよく知られているパン酵母(サッカロマイセス・セレビシエSaccharomyces cerevisiae)と密接に関連していることを示しました。
サッカロマイセス・セレビシエは、パン種、ビール醸造、ワイン製造、バイオエタノール生産などでさまざまな種類の酵母が一般的に使用されています。
これら2つの酵母の配列は実際には非常に類似しているため、サッカロマイセス・ブラウディはもはや別の種ではなく、サッカロマイセス・セレビシエの一種と見なされています。
一般的なパン酵母とは対照的に、このサッカロマイセス・ブラウディ酵母がプロバイオティクスとして成功した理由は、完全な謎のままです。
酢の突然変異
ヨハン・テヴェレイン博士率いるチームは、酢の主な成分である酢酸の生産がサッカロマイセス・ブラウディの際立った特徴であることを発見しました。
酢酸はよく知られている防腐剤であり、すべての微生物の成長を強く阻害します。
それにしてもサッカロマイセス・ブラウディはどのようにして大量の酢酸を生成するのでしょうか?
テヴェレイン博士は遺伝子調査を行っていると説明しました。
「サッカロマイセス・ブラウディには、酢酸の生産に関与する2つのユニークな変異が見つかりました。これらの変異は、これら2つのタイプの酵母を区別し、自然からの新しいサッカロマイセス・ブラウディ株の分離と同定を可能にする遺伝的「指紋」として機能します。」
この知識に基づいて、研究者はCRISPR - Casゲノムによる編集を実装して、酢酸生産を完全に廃止し、非常に高い酢酸生産者かその逆に切り替えることに成功しました。
これらの改変酵母株を使用して、実験動物においてのサッカロマイセス・ブラウディのプロバイオティクス力に対する酢酸産生の重要性をテストする ことができます。そしてそれは、腸疾患の治療の改善への道を開く可能性があります。
【以下のウェブサイトより引用】
Sciencedaily