ペットのマダニ予防、していますか?
みなさんは「マダニ」と聞いて、その姿や存在をイメージできるでしょうか。ダニというと畳や絨毯(じゅうたん)に潜む微小な生物を思い出すかもしれませんが、それとは全く異なります。犬や猫を飼われている方であれば、"夏場に予防する何か"といった認識はあるかもしれません。でも、そもそもダニがナニモノなのか、何に気をつければいいのか解らない方が多いようです。
マダニとは?…
マダニは体長が数ミリ程度で、昆虫とは異なり頭・胸・腹が一体で(頭に見えるのは鋏角=きょうかく=や口下片と呼ばれる血を吸うための口器がある顎体部)、8本の足を持つクモやサソリに近い節足動物です。
ダニ類は世界中に広く分布し、その数は4万種以上いるそうですが、われわれの生活環境でよく見られるものは十数種類程度です。ダニは大きく分類すると、マダニと屋内ダニに分かれます(英語では「tick」と「mite」に言い分けられています。)。屋内ダニは体長1ミリ以下で、その名の通り屋内に生息してホコリやフケなどの有機物を食べ、その一生を屋内で過ごします。畳や絨毯、布団などに棲(す)み、糞(ふん)や死骸がアレルギーの原因となる"いわゆるダニ"がこの屋内ダニです。
一方、マダニは草むらのある山や、河川敷、公園、庭など、われわれの身近な屋外に生息しており、動物の血液を吸って発育します。
成ダニは2~3ミリ程度の大きさなので肉眼でもハッキリと見えますが、吸血すると体は小豆よりも大きくなるため、この時ペットに寄生したマダニが発見されやすく、「ウチの子の皮膚にしこりができている」「ウチの子の周りに変なものが落ちている」と言って来院されるケースがよくあります。
マダニは動物に飛び移ると、毛の少ない薄い皮膚を探し、そこで唾液に含まれる酵素で皮膚を溶かしながら鋏角を使って皮膚を切開し、口下片という突起を差し込んで吸血します。この際に、唾液とともにセメントのような成分を分泌するため、マダニと動物の皮膚はより強く固定され、簡単には外れなくなります。
マダニの寄生による病気について…
マダニによる被害(病気)は、大きく3つに分けられます。
1つはマダニの寄生自体によるもので、刺された部位に皮膚炎を起こすことがあります。また、動物では体にものすごい数のダニが体にびっしりと寄生していることがあり、吸血により貧血を起こします。成ダニは最大で約1ミリリットル吸血するので、多くのダニに寄生されると小型の動物では命に関わるほど深刻な貧血を引き起こすこともあります。
2つめは、吸血の際に体内に入るマダニの唾液によるアレルギー性皮膚炎(かゆみ)や神経症状(麻痺=まひ=)。そして3つめは、マダニが媒介する感染症です。ペットを飼われている方は、バベシア症やライム病といった病名を聞いたことがあるかもしれません。病原体の種類により動物には無症状のものから食欲不振、貧血、痙攣(けいれん)を起こして死に至るものまであります。
マダニの予防…
マダニの生息域や活動時期は、種類やその土地の地形、野生動物の存在などにより異なりますが、一般的に冬は未吸血の状態で落ち葉の影などに隠れて越冬し、草地の草丈が10センチ以上になる春頃から晩秋まで活発に活動するため、その間の予防が必要です。
マダニの生息する草地に近づかなければ寄生することはありませんが、公園や散歩コースに草が全くないことの方が少ないですし、犬や猫はそういったところが大好きなので、駆虫薬による予防が実際的と思われます。
現在、駆虫薬は体の表面に塗るタイプや飲むタイプ、効果が1カ月持続するものから3カ月持続するものまでバリエーションに富んでいますので、動物病院で獣医師に相談して適した薬を選択してください。
もしマダニを見つけたら…
ペットの体にマダニが付着しているのを見つけたら、できるだけ早く除去します。除去する方法は、
(1)引き抜く。
(2)十分に吸血して自然落下するのを待つ。
(3)駆虫薬を使用する。
―のいずれかです。
引き抜く場合は、ピンセットで(頭のように見える)顎体部をつまんで引き抜くのですが、セメントのような物質で固定された口器がペットの体内に残って強い炎症を引き起こしてしまうことや、潰してしまって中身がペットの体内に流れ込んでしまう危険性がありますので、十分な注意が必要です。
そのまま引き抜くよりは、駆虫薬を使ってマダニ自身から脱落してもらい、死んで残ったマダニを引き抜いた方がいいかもしれません。
また、昨年にはマダニを手で潰して除去した際にSFTSに感染するという衝撃的な例が報告されているため、やはりマダニを見つけたら直ちにかかりつけの動物病院に相談することをお勧めします。
記事元:http://kenko100.jp/articles/150916003603/