ラパマイシンの老化防止効果のしくみ
新しい研究では、薬物ラパマイシン(またはシロリムス)の老化防止効果がどのように機能するかが詳しく調べられています。
1972年、モアイ像で有名なラパヌイと呼ばれるイースター島は、歓喜に湧きました。
それはラパマイシンの発見です。
過去30年間にわたり、土壌細菌から単離されたラパマイシンは、冠状動脈ステントの被覆および臓器移植を受けた人々の
免疫応答の低下を含む多くの方法で免疫抑制剤として適用されてきました。
現在、抗癌治療や神経保護、抗老化治療などの可能性があるために再び注目を集めています。
特定の経路
この薬は、mTORと呼ばれる私たちの細胞の細胞増殖の主な制御因子を標的にすることによって作用します。
ラパマイシンがmTORを標的とし細胞の増殖を阻害します。制御されない細胞の増殖は癌の一部となるため、これは強力な抗癌剤になります。
mTORを阻害することで、また、オートファジーと言われる、いわゆる細胞のリサイクルセンターであるリソソームが、
誤って折り畳まれたタンパク質および損傷した細胞小器官を浄化するプロセスを引き起こします。
これらのタンパク質と細胞小器官は、その後、細胞により再利用するためにアミノ酸と糖に変わります。
「リソソームの主な機能は、細胞内の有害なものを分解するため、細胞の健康な状態を維持することです。」
と、アメリカ・ミシガン大学の分子、細胞、生物学部門のポスドク研究者であるシャオリ・チャン博士は述べています。
「ストレス条件下では、オートファジーは機能不全の要素を分解し、アミノ酸や脂質などの細胞の構成要素を提供することで細胞の生存につながります。」
研究者たちは、ラパマイシンが複数の細胞経路を標的にしていると長い間考えてきました。
今、チャン博士と博士のグループの研究者たちは、それがどの経路であるかを発見しました。
それは、TRPML1と呼ばれるリソソーム膜上のカルシウムイオンチャンネルです。
健康な細胞
オートファジーは細胞を健康な状態に保つためには極めて重要であり、タンパク質と細胞小器官の質を維持するための
リサイクル経路としての役割を果たします。
細胞は、自然な老化過程、特にアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患では、
機能不全のタンパク質や細胞小器官に散存しています。
自食作用はリソソーム活性に密接に依存しています。
リソソームの主なカルシウムチャネルとして、TRPML1はリソソーム機能の調節には重要です。
「この経路がなければ、神経変性を起こします。」
と研究の主任研究者であるスー・ハオシン博士は言います。
「チャンネルを刺激すること自体が、抗神経変性となるのです。」
主執筆者のチャン博士とウェイ・チェン博士は、「リソソームパッチクランプ」と呼ばれる最先端の技術を用いてTRPML1を調査しました。
研究チームは、ラパマイシンをリソソームに適用したとき、ラパマイシンがmTORが活性であってもなくてもチャネルを開くことを見ることができ、
ラパマイシンがmTOR活性とは無関係にTRPML1チャネルを活性化することを見出しました。
最も重要なことは、TRPML1欠損細胞ではラパマイシンがオートファジーを引き起こすことができなくなったため、
チームはラパマイシンがTRPML1に依存したオートファジーを増強することがわかったことです。
「我々は、リソソームのTRPML1がラパマイシンの神経保護作用とアンチエイジング作用に大きく貢献すると考えています。」
とチェン博士は言います。
「ラパマイシンの新たな標的の同定は、次世代のラパマイシンの開発における洞察となり、それは、
神経変性疾患に対してより特異的な効果をもたらすことでしょう。」
【以下のウェブサイトより引用】