リウマチの薬で発毛―米エール大で25歳男性の症例を報告
脱毛症の中でも症状の重い汎発(はんぱつ)性脱毛症は、髪の毛だけでなく、全身の毛が抜け落ちる病気で、最も治療が難しいといわれている。米エール大学医学大学院のBrittany G. Craiglow氏らは、この脱毛症に悩まされている25歳の男性に、免疫を抑えて関節リウマチを治療する「ゼルヤンツ」(一般名トファシチニブ)を服用させ
たところ、頭髪や眉毛、体毛が生えてきたと、6月18日発行の米医学誌「Journal of Investigative Dermatology」(電子版)に発表した。脱毛症は自己免疫の乱れが原因ではないかとの説があるが、それに基づく治療の有効性を示した初の報告という。
汎発性脱毛症は、円形脱毛症が体の全体に広がる病気で、全身脱毛症とも呼ばれる。円形脱毛症のように自然に治ることはなく、治療は通常、ステロイド薬の服用などを行う。
Craiglow氏らが報告したのは、5年前から尋常性乾癬(かんせん)に悩まされている25歳の男性の例。この男性は、別の医療機関でステロイド薬の塗り薬による治療を行ったものの効果がなく、1年前から始めた関節リウマチ治療薬の「ヒュミラ」(一般名アダリムマブ)でいったんは症状が軽くなったが、悪化が見られたため、エール大学病院に紹介された。
男性には尋常性乾癬のほかに2歳頃から発症した円形脱毛症があり、18歳頃には汎発性脱毛症へ発展。ステロイド薬の塗り薬が効かなかったため、それ以降の治療は行われていなかった。
男性の頭髪や体毛はほとんど抜け落ちていたが、頭部の乾癬がある部分には毛髪が残っていた。Craiglow氏らは、米国や日本などで関節リウマチの治療薬として承認されているゼルヤンツが乾癬に有効との報告のほか、動物実験で円形脱毛症が改善したとの複数の報告があったことから、この男性にゼルヤンツによる治療を開始した。
男性に、ゼルヤンツを1日10ミリグラム(日本の関節リウマチ治療と同量)を服用させた結果、2カ月後に乾癬の症状が改善し、それと同時に頭髪や眉毛、まつげなどの発毛が確認された。
その後、1日15ミリグラムに増やして治療を続けたところ、頭髪全体、眉毛、まつげ、脇毛、陰毛が十分に生え、8カ月後には完全な発毛が得られた。この時点で、男性に副作用や異常は認められなかった
という。なお、乾癬の改善度は軽かったと報告されている。
Craiglow氏らは今回の結果から、汎発性脱毛症に対するゼルヤンツの有効性を検証する臨床試験の申請を行ったという。
記事元:http://kenko100.jp/