一部の神経疾患薬は患者の負担が急増
(ロイターヘルス) - 多発性硬化症、てんかん、パーキンソン病などの神経障害を持つ多くの患者は、近年、薬の自己負担費用が急増している、
と米国の研究では示唆されています。
研究者らは、多発性硬化症、末梢神経障害、てんかん、認知症、またはパーキンソン病を患っており、
個人健康保険に加入している912,000人を超える人々について、2004年から2016年までの自己負担医療費に関するデータを調べました。
調査されたすべての患者がこれらの疾患を治療するために少なくとも1つの薬を服用し、
研究者は各疾患について最も一般的に処方されている薬剤、そして最も高価な薬の費用を追跡しました。
これまでのところ、多発性硬化症薬は最もコストが上昇しています。
これらの薬の患者の月間平均自己負担費用は、15ドルだった2004年から2016年には309ドルまで増加しました。
診断後の最初の2年間の累積自己負担費用は、多発性硬化症で2,238ドルで、
新しく診断されたてんかん患者が支払った230ドルの自己負担額の10倍でした。
最もコストが高い多発性硬化症患者は、2年間で9,855ドルを費やしました。
これに対して、てんかん患者では865ドルです。
「私たちの研究では、過去12年間で特定の薬物治療に対しての自己負担費用が無視できないほど高くなっていることが明らかになっています。」
とミシガン州アナーバーにあるミシガン大学の主任研究者のブライアン・キャラガン博士は述べました。
キャラガン博士は
「自己負担による費用が経済的困難を招き、服薬の遵守を低下させる可能性があるため、これは患者にとっては深刻です。」
と述べました。
多くの理由から、自費負担が急増しています。
原因のひとつとしては、より古いジェネリック錠剤よりもより高価な新しい注射形態も可能なバイオテクノロジー薬の出現だと、
医療誌『Neurology』の中では指摘されています。
もう一つは、控除額の高い健康保険の人気が高まっていることです。
これは掛け金がより低いものの、通常、薬局での自己負担額がより高くなります。
控除額の高いプランでは、多発性硬化症薬を使用する人は2倍以上の自己負担を支払いました。
2016年には、控除額の多い多発性硬化症患者の月額平均661ドルに対し、控除額の少ないプランでは月額246ドルが支払われました。
自己負担費用の推移は医薬品や疾病によって異なりますが、
一般に認知症やパーキンソン病を治療する患者にはそのための医薬品の費用の増加が見られたことが研究で分かりました。
調査には、調査した5つの神経疾患を治療するための薬剤すべてが含まれてはおらず、
それは特定の病気のための薬剤に焦点を合わせました。
また、自己負担額の増加により、患者が必要な薬の補充が遅れたり、購入できなかったりする可能性があることや、
または高額の薬が病院や医師のサービスの利用や、支出の抑制に役立つ可能性があることも調査から明らかになっていないと、
ロサンゼルスにあるカリフォルニア大学薬学部のジェフリー・ジョイス博士は述べました。
この研究に関わっていなかったジョイス博士は次のように述べています。
「例えば、特定のアレルギー治療薬の自己負担価格の引き上げに言及すると、それらは必須薬ではなく、
店頭販売を含む他の代替治療薬があるため、癌治療薬または多発性硬化症を治療するための薬の自己負担価格の変化よりも、
その薬の使用に大きな影響を及ぼします。
同じく、研究に関与していない、テネシー州ナッシュビルにあるヴァンダービルト大学医学部の研究者であるステイシー・デュセチナ博士は、
この研究で示された状況は、投薬で適切に管理されないと命にかかわる可能性があると述べました。
「例えば、他の研究では、処方された通りに薬を服用していない、てんかん患者は、緊急医療機関の利用、
入院、怪我、死亡のリスクが高いことがわかっています。」
とデュセチナ博士は述べました。
「ここでの朗報は、研究された多くの病状には、手ごろな治療薬の選択肢があるということです。」
費用が高すぎると思う場合、患者は進言するべきだとブリガムアンドウィメンズ病院のアーロン・ケッセルハイム博士は言います。
「患者さんたちができる最も重要なことは、多くの医師が患者が薬に支払う金額を知らないため、
これらの費用的な問題について医師に相談することです。」
とケッセルハイム博士は述べています。
「場合によっては、同様に作用する低コストのジェネリック薬など、代替手段があるかもしれません。」
(注:1USドル =111円, 2019年5月3日)
【以下のウェブサイトより引用】