不平等な医療状況でも人は長生き
世界保健機関(WHO)は、平均寿命が5年延びたと報告していますが、データでは、医療機関の利用について、国により不平等であることが
示されています。
世界保健統計シリーズ(The World Health Statistics series)は世界保健機関(WHO)によって毎年まとめられる世界の保健医療状況を示すデータです。
世界保健統計2016年の報告書では、2015年9月に国連加盟国すべてが採用した健康関連の持続可能な開発目標(SDG)に焦点を当てています。
SDGは、すべての人にとって、より持続が可能な未来を実現することを目指しています。
主な目標は、貧困と不平等の排除、手頃な価格でのクリーンエネルギーの提供、気候変動による響の軽減、教育へのアクセスの向上、
平和の促進などです。
SDGは極端な貧困の削減やHIVの蔓延から、世界的な初等教育の提供を2015年までに到達することを目標としたミレニアム開発目標
とは異なります。
普遍的な健康保険からは程遠い
世界平均寿命は2000年から2015年にかけて延び、1960年代以来の最も速い増加が示されています。
子供の生存率の改善、マラリア対策、およびHIV治療が可能になったことで、WHOアフリカ地域では最も大きな増加が見られました。
この地域では、平均余命は9.4年増え、60歳になりました。
こういった世界的な利益にもかかわらず、地域での不平等な状況は続いています。
それが子供になると、平均余命は出生国により差があることが示されています。
高所得国29カ国の新生児の平均寿命は80歳以上であり、サハラ以南アフリカの22カ国の新生児の平均寿命は60歳未満です。
女性と男性の平均寿命は同様の傾向を示しています。
日本人女性とスイス人男性は、最も長生きで、それぞれ、約87歳と81歳と見込まれています。
一方、シエラレオネの男性と女性が世界最短寿命で、女性は51歳、男性は49歳です。
WHOの元事務局長である、マーガレット・チャン医師は、次のように述べています。
「世界保健統計2016年では、16項目の重要なサービスの利用状況を測定していますが、その結果は、特にアフリカと東地中海地域において、
普遍的な健康保険への関心が依然として低いことが示されています。加えて、その地域では多くの人々が高い自己負担医療費を支払わなければなりません。 」
報告書は、各国間の医療サービスの利用状況の不平等を示しています。スワジランド、コスタリカ、モルディブ、タイ、ウズベキスタン、ヨルダン、モンゴルでは、それぞれの地域で不妊治療や産科医療、新生児医療、および子供の健康のためのサービスの利用状況が最も不平等です。
リスクに対処するための課題への取り組み
世界保健統計2016年によると、毎年、何百万人もの人々が天寿を全うすることなく死亡しています。
- 1,000万人を超える人々が70歳までに心血管疾患と癌により死亡
- 5歳までに590万人が死亡
- 調理用燃料による大気汚染により430万人が死亡
- 屋外汚染により300万人が死亡
- 交通事故により125万人が死亡
- 妊娠と出産の合併症により303,000人の女性が死亡
- 80万人が自殺で死亡
- 47万5000人が殺人により死亡
さらに、何百万人もの人々がHIV、結核、またはマラリアに感染し、17億人がWHOが無視されていると分類している、熱帯病の治療を必要としています。
報告書では、また、SDGsに向けての進捗状況を追跡するために、埋める必要がある重大なデータギャップを指摘しています。
例えば、ブラジル、中国、イラン・イスラム共和国、南アフリカ共和国、トルコなどの国々ではかなりの進歩が見られましたが、世界全体で53%が死亡についての記録がありません。
この課題に取り組むためには、世界中で病気と死に関係する危険因子に取り組むことが重要です。
WHOは、以下の数字を減らすためには変化が必要であると強調しています。
- 31億人が料理の際に汚染燃料を使用している。
- 11億人が少なくともタバコ製品を1本吸っている。
- 18億人が汚染された水を飲んでいる。
- 9億4600万人の人々が、野外で排便を行っている。
- 5歳未満の子供1億5600万人が発達に遅れがみられる。
- 5歳未満の4,200万人の子供が肥満である。
【以下のウェブサイトより引用】