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JapanRx / 人気の心臓薬が一部の患者でのハーセプチン誘発性の心臓病を予防

人気の心臓薬が一部の患者でのハーセプチン誘発性の心臓病を予防

心臓の損傷に関連している標的がんの治療薬、トラスツズマブと同時に2つの有名な心臓薬のうちの1つを服用し始めた乳がん患者は、心臓機能の低下を予防するという点でメリットがなかったと米国心臓病学会第67回年次学術会議で発表されました。
しかし、トラスツズマブに加えてアントラサイクリン系の化学療法を受けたことがあるか、または同時に受けていた患者では、アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害剤)リシノプリルまたはベータ遮断薬カルベジロールのいずれかを服用していた患者での治療後2年の追跡調査において、心疾患の発生率はプラセボと比べて半減しました。  

「私達の調査はトラスツズマブの標準的な治療法を行っているだけの女性においては、カルベジロールもリシノプリルも差がないようですが、アントラサイクリン系薬剤で治療を行った経験がある患者にとって、これらの薬物療法は心臓保護の役割になりうることを考慮する必要があります。」と、ケンタッキー大学の心血管疾患部の医学教授であり、この研究の主任著者であるマヤE.ググリン医師は述べました。  

この研究は、特定の癌治療が心不全または他の心臓の問題に寄与し得るという認識が高まっている中で行なわれました。  
小規模な研究では、アントラサイクリン誘発心毒性に対する保護において、これらの一般的に使用される心臓薬の有用性が検討されていますが、この試験では、これらの薬物がトラスツズマブに関連する心臓の損傷を予防し、潜在的に命を救う治療を中止する必要性を防ぐことができるかどうかを検討するための最初の試験であり、これまでの研究では最大の試験となります。   「トラスツズマブに予防効果があるかどうかを知りたいのです。」とググリン医師は言います。  

トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)は、特に悪性度の高いがんであるHER2陽性乳がんの画期的な治療薬として賞賛されています。
しかしググリン医師によると、この治療薬を受けている女性の4人に1人には、心臓の虚弱により身体のニーズを満たすのに十分な血液を汲み上げることができない、症候性心不全を含む心臓の問題が発生することが示されています。  
これは、トラスツズマブでの治療を開始する前に、駆出率(心臓の主なポンプ室である左心室から排出される血液量の割合)を心エコー図または他のイメージング様式を介して女性をスクリーニングするように求められた、より厳しい臨床ガイドラインへ導きました。 駆出率が50%未満(正常の下限)である場合、それらは現在の基準では、トラスツズマブによる治療は適していません。    

「これは非常に難しい状況です。心臓を傷つけたくないと同時に、がんの治癒の機会を妥協したくないと思うのも確かです。」と彼女は述べました。  
「この最初のスクリーニングプロセスがあるために、我々は潜在的に救命ができる治療薬のひとつが使用できないのです。」
ググリン医師は、アントラサイクリン系薬剤での化学療法は心筋に長期にわたり、不可逆的な損傷を引き起こす可能性があるものの、トラスツズマブでの治療法は心機能への影響は軽度で、かつ、しばしば一時的な心機能の低下と関連しているにすぎないと説明しました。  
「アントラサイクリンは、トラスツズマブよりもはるかに大きな規模で心筋に障害を引き起こす可能性がある侵攻性のある薬剤であることが確認されています。」と、このタイプの化学療法は以前から行われている可能性があると付け加えました。
したがって、駆出率は正常ですが、トラスツズマブでの治療を開始できる時点で心臓はすでに傷ついている可能性があります。  
この予定された無作為化比較試験では、乳癌と診断され、トラスツズマブの使用が臨床的に示された北米の165軒以上のセンターで確認された468人の患者が登録されました。
すべての試験参加者は、駆出率によって測定された正常な心機能を有し、その他の医学的理由でACE阻害剤またはベータ遮断薬は服用していませんでした。 

半数はアントラサイクリンに基づく化学療法をその時点で受けていたか、過去に受けたことがありました。 患者はリシノプリル(10mg)、カルベジロール(10mg、商品名:Coreg CR)またはプラセボを1日1回投与され、患者には2年間追跡調査が行われました(トラスツズマブでの有効治療の年とその次の年)。
グループは、年齢(平均51歳)および心血管リスク因子の点で同等であった。研究者らは、3ヶ月ごとに心機能および心エコー検査による心機能の低下を評価しました。  
トラスツズマブによって引き起こされる心毒性の予防、または治療中の トラスツズマブに関連する心臓の損傷を予防するという観点では、リシノプリルもカルベジロールもプラセボと統計的に異なってはいませんでした。
しかし、アントラサイクリン系薬剤で治療された患者では、これらの心臓薬は、左心室駆出率(心臓の圧排能力)を維持するのに有効でした。  
カルベジロールおよびリシノプリルは、心機能の低下を半減させ、それは統計学的に有意な差でした(プラセボと比較してそれぞれ0.49および0.53のオッズ比)。

プラセボの患者の32%、カルベジロールの患者の29%、リシノプリルの30%にみられる有害な心臓への影響は、3つの群で同様でした。
一般的な有害事象は低血圧およびめまいであり、カルベジロール群ではそれはごく軽度でした。  
「私たちの研究は、カルベジロールがより良好に許容されることを示しています。」とググリン医師は述べました。
「しかし、研究に基づいて、乳がんに罹患している患者で腫瘍専門医がハーセプチンでの治療が検討されている場合で、患者が既にアントラサイクリンを摂取している場合は、リシノプリルまたはカルベジロールのいいずれか良い方で前治療がされることで、ハーセプチンを心臓を傷つけずに服用し、心機能の低下を避けることができます。 」

彼女は、すべてのがん治療法が心臓の問題を引き起こすわけではなく、関連する心臓の損傷のリスクを潜在的に最小限に抑える方法があるかもしれないと強調しています。  
腫瘍学者で上級研究の著者であるパメラ・ミュンスター医師は、この試験は、リスクの高い患者の癌治療を計画する際に臨床医が使用することができる重要なデータを提供すると述べました。
また、「この研究は、腫瘍専門医に、HER2陽性の早期乳癌患者にアントラサイクリンを使用する選択肢を提供するため、非常に重要です」と、彼女は述べています。
「アントラサイクリンに基づくレジメンは、高リスク患者にとってより効果的ですが、心毒性の増加はという懸念がその使用を制限しています。」  
研究者は、データを分析し、標的がん治療と一緒に心臓薬を服用することが心臓機能不全の大きさ、持続期間、および逆転できるかどうかを評価し続けます。  
【以下のウェブサイトより引用】
https://medicalxpress.com/news/2018-03-popular-heart-medications-herceptin-induced-issues.html