代謝を調節するメカニズムの発見
タンパク質複合体mTORC1(ラパマイシン複合体1の哺乳類標的)は、細胞代謝の中心的な調節因子です。
それがアクティブな状態では、同化過程を刺激し、タンパク質および脂質の生産および貯蔵を増加させます。
ドイツのライプニッツ研究所とグローニンゲンにあるオランダ高齢化研究所(ERIBA)の研究者たちは、mTORC1により代謝を調節する方法
のメカニズムを発見しました。
それは、転写調節因子C /EBPβの特定の変異体の発現を制御します。
マウスでのこの変異体の排除は、健康な代謝、痩身およびインスリン感受性の改善をもたらします。この研究により、肥満およびII型糖尿病な
どの代謝性疾患の治療のためのあたらしい方策の基礎を提供することができます。
mTORC1は、細胞の代謝の中心的な調節因子であり、その活性は、栄養素利用可能性および成長シグナルによって調節されます。
それが活性化された場合には、同化代謝およびタンパク質及び脂質の増強産生を刺激します。
結果的にはバイオマスの増加は組織の成長には不可欠です。
栄養過剰によるmTORC1のハイパー活性化が肥満につながることがあり、2型糖尿病などの代謝性疾患を促進すると考えられています。
対照的に、カロリー制限食は、mTORC1の活性を低下させます。
これは代謝の健康を向上させ、哺乳類の多くに対して寿命を延ばす作用があります。
過去に多くの研究者が、代謝におけるその重要な役割として過去数年の間、mTORC1の機能に焦点を当てています。しかし、具体的に
mTORC1によって制御され、それが代謝調節に重要である遺伝子の調節に関与しているされている要因についてはほとんど知られていません
。今、ライプニッツ研究所とグローニンゲンにあるオランダ高齢化研究所(ERIBA)ドイツのフリッツ·リップマン研究所(FLI)、および欧州研究所は、mTORC1において代謝過程を調節するメカニズムを発見し、その研究結果が、EMBOに掲載されました。
(代謝遺伝子転写のオンとオフ)
「研究者はmTORC1が、栄養供給によって活性化されることについて既に多くのことを知っている。しかし、代謝遺伝子を調節し生体の代謝状態を決定する下流の要因についてはほとんど知られていない。」
と、前FLIのグループリーダー、コルネリスカークホーベン教授(ERIBA)は説明しています。
mTORC1の主な機能は、生物学的に活性タンパク質の産生をもたらす遺伝子発現の重要で、最終的なプロセスであるmRNAの翻訳の転換を刺
激することです。
「我々は今、C /EBPβという因子を見つけました。それは、mTORC1によって制御されています。C /EBPβは、様々な代謝遺伝子を制御する
遺伝子の調節因子です。C /EBPβは細胞内に二種類が存在し、短い変異体は遺伝子を抑制し、一方、長い変異体は遺伝子活性化剤の役割をしま
す。」カークホーベン教授は続けます。
「我々のデータは、mTORC1が、具体的にC /EBPβの短い変異体の形成を促進することを示しています。」
FLIの元研究員クリスティン·ミュラー博士(ERIBA)は述べています。
研究者らは、マウスモデルを使用し、C /EBPβ遺伝子における突然変異は、mTORC1の活性化された場合でも、短いC /EBPβ変異体の産生を
防止するという研究を行いました。
「興味深いことに、我々のデータは、この変異を有するマウスが、低脂肪の代謝や脂肪の蓄積、および改善されたインスリン感受性と耐糖能な
どが改善された代謝表現型を表示することを示しています。」と、FLIの博士研究員であるローラジーデク博士は、調査結果について強調しています。
(健康的な代謝)
「マウスモデルにおいて観察された健康的な代謝表現型は、カロリー制限下で発見されたものと類似しています。」とカークホーベン教授は説明しています。興味深いことに、これらのプラス効果は、食物摂取量を低下させることなく達成することがでるのです。マウスは満腹になるまで食べたにもかかわらず、脂肪がつきません。
我々の研究では、C/EBPβ変異体の形成がを調節するメカニズムはmTORC1によって制御される代謝経路において重要な分子スイッチであることを示しています。
したがって、C/EBPβ変異体アイソフォーム発現の薬理学的目標は、それによって健康でいる期間を延長し、肥満およびII型糖尿病などの代謝性疾患の治療のための有望な戦略を提供することができます。
出典:
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/