兵役関連でのPTSDの多くは、第一選択の精神療法による治療では不十分
最近の臨床試験のレビューは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の現役軍人および退役軍人の治療における第一線の心理療法の有用性について、冷静に描かれています。
ニューヨーク大学グロスマン医学部(NYU Grossman School of Medicine)の研究者の主導により、最近、Journal of the American Medical Association(JAMA)インサイツに公開されたこの記事は、2つの確立された第一線の治療方法である長期暴露療法(PE)と認知処理療法(CPT)で、PTSDを治療しています。
研究者らは、これらの治療法による臨床試験では、現役の軍人および退役軍人におけるPTSDの治療の有効性が限られたのもであると結論付けています。
このレビューはまた、兵役関連のPTSDの場合、トラウマ体験の記憶を繰り返し活性化して処理するPEやCPTのようなより感情的な要求が高い治療法が、現在中心の療法(支持的に問題解決を行う治療)、超越瞑想や抗うつ薬などの生物学的治療といった、患者がトラウマ的な出来事を思い起こす必要のない介入より有益でなかったことが報告されています。
ニューヨーク大学グロスマン医学部のルシウス・リッタウアー精神医学部の教授で上級著者であるチャールズ・R・マーマー博士は、述べています。
「軍事行動関連のPTSDを治療するための認知行動療法での限られた価値は、ほとんどの退役軍人(VA)、およびアメリカ合衆国国防総省(DoD)のヘルスケア設定で展開されている万能のアプローチを超越する必要性を示唆しています。繰り返の戦場体験によるストレスがかかっている状態といったサービス前の脆弱性と複雑さを説明し、個別化した治療を行う必要があります。」
ニューヨーク大学グロスマン医学部精神医学科の臨床助教授である筆頭著者のマリア・M・スティーンカンプ博士は、また、治療に対して無反応であったことにもっと注意を向けるべきだと指摘しています。
「この分野の研究は、確認試験から、生物学的療法を含む、より柔軟で多面的で長期的な治療法を検討する研究に移行する必要があります。」
と彼女は言います。
この遡及的レビューは、スタンフォード大学の研究者が主導し、2019年4月にScience Translational Medicine誌に発表されたPTSDの民間人での研究と、サブグループが長期暴露療法に反応しなかった理由の発表からわずか数か月後に行われています。
脳の機能的脳画像を用いたスタンフォード大学の研究では、脳の腹側注意ネットワーク(VAN)で、神経回路活動が変化したPTSDがある民間人の患者は、長期暴露療法の結果が好ましくなかったことがわかりました。
兵役に関連する PTSDに苦しんでいる人々において、脳回路異常のこのパターンが過剰に表現されているかどうかは、まだ研究されていません。
「一方で、現在の臨床試験では、兵役関連によるPTSDの治療には臨床的な複雑性と不均一性が伴うことが強く示唆されています。軍隊に勤務した多くの人にとって、PTSDに対する標準化されたトラウマに焦点を当てた認知行動療法は感情的に要求が高く、臨床的な改善はごくわずかである可能性が高いのです」
と、マーマー博士は結論付けました。
【以下のリンクより引用】
Many with military-related PTSD do poorly in treatment with first-line psychotherapies
Medical Xpress