処方をやめる取り組みが認知症患者には効果がないことが判明
ボストンにあるベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンター(The Beth Israel Deaconess Medical Center)率いる研究者らは、認知症の診断が高齢者の薬物使用パターンにどのような影響を与えるかを調査しました。
JAMA Internal Medicine誌に掲載された論文「認知症診断後の長期薬物使用の変化Changes in the Use of Long-Term Medications Following Incident Dementia Diagnosis」では、大規模コホート研究により、認知症診断後の1年間においての全体的な薬物使用量の増加など、いくつかの予期せぬ発見があったことが明らかになりました。
認知症患者における投薬計画を簡素化し、薬物有害事象のリスクを軽減することの重要性が認識されているにもかかわらず、この研究では、処方中止のガイドラインと取り組みが期待されるレベルで効果的に実施されていないことが判明しました。
これは、認知症患者のケアにおいて処方箋を撤廃するためのガイドラインや取り組みが効果的に実施されていない可能性があり、臨床現場に潜在的なギャップがあることを示唆しています。
アルツハイマー病関連の認知症は米国の何百万人もの人々が罹患しており、投薬管理や治療決定において大きな課題となっています。
認知症の高齢者は複数の慢性疾患を抱えていることが多く、投薬計画が複雑になります。
既存の臨床ガイドラインでは、併存疾患、潜在的な利益、患者の目標に基づいて治療を調整することが推奨されていますが、認知症の診断が薬物使用パターンや処方解除に及ぼす影響については解っていません。
この研究では、2010年から2019年までのメディケアパートD受益者の薬局請求の全国サンプルから、認知症を発症している266,675人と同数の対照群の266,675人について分析を行いました。
検証された診断コードを使用し新たな認知症の症例が特定されました。
認知症患者は、さまざまな人口統計および薬物関連の要因に基づいて対照と照合されました。
認知症診断の前後で薬物の使用パターンが評価され、時間の経過に伴う薬物使用の変化を評価する分析が行われました。
特定の処方傾向
認知症患者は抗認知症薬の使用量は認知症管理のために明確に処方されているため増加していくことは予想されます。
そして認知症の診断が出た後は、中枢神経系に作用する薬剤の使用が予想外に増加していました。
これらの薬は認知機能に悪影響を与える可能性があり、通常は推奨されないため、専門的なガイドラインに矛盾してしまい、そういった懸念を引き起こします。
多くのCNS活性薬は、転倒リスクの増加や認知機能の悪化、その他の薬物有害事象との関連性により、潜在的に不適切であることが確認されています。
降圧薬やインスリンなどの一部の心臓代謝薬は、診断後すぐに使用量が増加する傾向があります。
抗コリン薬の使用は認知症コホートではわずかに減少したものの、これらの薬には認知に悪影響を与える可能性があることが知られています。それにもかかわらず、依然として処方され続けていました。
「今回の研究結果では、安全性のリスクが高く、利益の可能性が限られている、あるいは認知障害と関連している可能性のある長期服用薬の処方を中止することで、厄介な多剤併用療法を減らす機会を逃しているということが示されています。」
と著者らは結論付けています。
【以下のリンクより引用】
Deprescribing efforts failing dementia patients, study finds
Medical Xpress
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