前臨床試験では新しいワクチンはアルツハイマー病の進行を止めるのに役立つ可能性がある
毒素を含む異物に対しての十分に調節された防御を始める私たちの免疫システムの能力は、年齢とともに弱まるため65歳以上の人々でのワクチンの効果を低下させます。
同時に、研究では、神経毒性型のペプチドアミロイドベータ(オリゴマーAβ)を標的とする免疫療法は、最も一般的な加齢性神経変性疾患であるアルツハイマー病の進行を止める可能性があることが示されています。
サウスフロリダ大学医学部(USFヘルス)のカオ・チュアンハイ博士が率いる研究チームは、免疫力の低下、過剰な炎症、および治療用アルツハイマー病ワクチンの開発を妨げる、過剰な炎症、およびその他の合併症を克服することに焦点を当てています。
現在、カオ博士と同僚による前臨床試験では、オリゴマーAβに対する特異的抗体反応を伴う『抗原提示樹状ワクチン』がより安全であり、アルツハイマー病の治療に臨床的利益をもたらす可能性があることが示されています。
この、『 E22W42 DC』と呼ばれるワクチンは、抗原へ変えられたAβペプチドを搭載した樹状細胞(DC)として知られる免疫細胞を使用します。
この新しい治験用ワクチンのアルツハイマー病のマウスモデルによる研究は、10月13日に医療誌『Alzheimer's Disease』のオンライン版に掲載されました。
アルツハイマー病の2つの特徴的な病状の1つは、脳内の神経細胞(アミロイドタンパク質斑)の間の、硬化したAβ沈着物が凝集すること。
もう1つは、脳細胞内のタウタンパク質の神経原線維の変化です。
どちらも神経細胞シグナル伝達の損傷を引き起こし、最終的にアルツハイマー病と症状の発症を引き起こします。
「この治療用ワクチンは、体の中に元々ある免疫細胞を使用して、脳に有害に蓄積する有毒なAβ分子を標的にします。」
と、USFヘルスタネジャ薬学部、USFヘルスモルサニ医学部そして、学内にあるバードアルツハイマーセンターの神経科学者であるカオ博士は述べています。
「そして重要なことに、それは老化したマウスに望ましくないワクチン関連の自己免疫反応を誘発することなく強力な免疫調節効果を提供します。」
残念ながら、これまでのアルツハイマー病のすべての抗アミロイド治療の臨床試験は失敗しました。
これには、Aβ(AN-1792)を対象とした最初のワクチン試験が含まれます。
「炎症はアルツハイマー病の主な症状であるため、副作用として神経炎症を伴う可能性のある治療は、本質的に火に油を注ぐものです。」
とカオ博士は述べました。
アルツハイマー病に対する次世代の抗アミロイドワクチンは、理想的には、高齢者の免疫系を過剰に刺激することなく、Aβオリゴマーが破壊的なアルツハイマー病のプラークにさらに凝集するのを防ぐために必要な長期的で中程度の抗体レベルを生み出すだろうとカオ博士は付け加えました。
この研究で、研究者らは、マウス骨髄に由来する修飾Aβ感作樹状細胞を使用して処方されたワクチンをテストしました。
樹状細胞は他の免疫細胞(T細胞およびB細胞)と相互作用して、健康な組織に対する有害な反応を抑制するための免疫の調節を補助します。
「樹状細胞を使用して抗体を生成するため、このワクチンは自然免疫と獲得免疫の両方を調整して、免疫系の加齢に伴う障害を克服できる可能性があります。」
とカオ博士は述べています。
この研究には、ヒトアルツハイマー病を模倣する高レベルのAβおよび行動/認知異常を発症するように遺伝子操作されたトランスジェニック(APP / PS1)マウスの3つのグループで行われました。
1つのグループは治験中の『E22W42DCワクチン』が接種され、別のグループは樹状細胞を刺激するために内因性アミロイドベータペプチドが投与されました(野生型ワクチングループ)。
そして、3番目のグループはAβペプチドを含まない樹状細胞のみが注射されました(DCコントロールグループ)。
4番目のグループは、未治療の健康な高齢のマウス(非トランスジェニック対照グループ)で構成されていました。
調査結果
このワクチンは、アルツハイマー病のトランスジェニックマウスの記憶障害を遅らせ、E22W42 DCワクチン接種群のマウスは、非トランスジェニックの未治療マウスと同様の記憶能力を示しました。
ラジアルアーム水迷路と呼ばれる認知テストでは、E22W42 DCワクチンを接種したマウスは、非感作樹状細胞のみを注射したマウス(DCコントロール)よりも、作業記憶のエラーが大幅に少ないことも示しました。
作業記憶が失われると、アルツハイマー病の特徴である新しい情報を学び、保持することが困難になります。
ワクチン接種されたマウスの血漿で測定された炎症性サイトカインの量と、対照マウスの量との間に有意差は見られませんでした。
研究者らは、E22W42DCワクチンには免疫系を過剰に刺激する可能性はほとんどないと結論付けました。
E22W42 DCワクチンを接種したマウスは、修飾Aβペプチドを含まない樹状細胞を投与したトランスジェニック対照マウスよりも、脳と血液の両方で高レベルの抗Aβ抗体を示しました。
研究者らは、T細胞エピトープ(相補的抗体が結合する抗原の異なる表面領域)に変異が行われたAβペプチドのみが、樹状細胞を感作して毒性のあるオリゴマー形態のAβを標的にすることができると報告しました。
E22W42の主な利点は、抗原が免疫系を活性化する特定のT細胞応答を刺激し、自己免疫応答に関連するいくつかのT細胞エピトープを沈黙させることができることだと彼らは付け加えました。
「E22W42感作DCワクチンはアルツハイマー病の患者のために開発されていますが、それは(他の加齢性障害のある)高齢患者の免疫システムを強化するのにも役立つ可能性があります。」と研究の著者は結論付けました。
【以下のリンクより引用】
New vaccine could help halt Alzheimer's progression, preclinical study finds
Medical Xpress