南アの女性へ先天性欠損症のリスクはあっても検討すべきHIV治療薬
女性が妊娠中にHIV薬のドルテグラビルを使用すると、子供に致命的な神経管欠損症のリスクが高まる可能性がありますが、新しい研究では、そのようなリスクはあるものの、女性の死亡率を減らし子供やパートナーへのHIV感染を防ぐという薬剤の能力によりそのリスクが相殺される可能性があります。
マサチューセッツ総合病院(MGH)の研究者が率いるこの報告書は、『Annals of Internal
Medicine』に掲載されています。
この研究を主導したMGHの感染症部門および医療評価センターのケイトリン・ダグデール医師は、次のように述べています。
「しかし、各国が現在の第一線治療を今より安価なドルテグラビルによる治療に置き換えることを検討しているため、妊娠する可能性のある何百万人もの女性に対して、世界規模でそれを使用することのリスクと利点を評価することが重要です。」
ドルテグラビルは2013年から米国では利用が可能となっており、資源の豊富な国々で推奨される第一選択のHIV治療の一部です。
これは、ほとんどの中低所得国で現在行われている第一選択治療であるエファビレンツよりも副作用が少なく、治療失敗率も低いとされています。
ドルテグラビルはこれらの国々では以前は手が届きませんでいたが、その後の価格交渉により、最近、年間一人当たり75ドルのジェネリック版が開発されました。
HIVが最も流行している多くの開発途上国は、2018年にドルテグラビルの展開を計画していましたが、ボツワナの出生サーベイランス調査で、ドルテグラビルが神経管欠損症のリスクを高めることによって、胎児に害を及ぼす可能性があることを示唆する予備的データが発表されたことを受け、これらの計画を遅らせました。
ダグデール医師は、「ボツワナの研究の予備的な結果が統計的に問題があるのか、それとも真に懸念したの結果であるのかを知るために、さらなるデータを待っています。妊娠する可能性のあるHIVの女性にどの治療方法を推奨すべきかについて決定を下さねばなりません。」
公衆衛生の観点から、女性に対するさまざまなHIV治療の選択肢についての潜在的な影響を調べるために、研究者らは南アフリカからの疫学的データおよび臨床試験からの治療効果データと共に、確立されたHIVの数学モデルを使用しました。
このモデルを用いて、南アフリカのHIVを患う出産可能年齢の女性、約310万人とその子供たちの5年間にわたる臨床転帰を予測しました。
彼らは、すべての女性に対してドルテグラビルによる治療を行うという方針を、HIVを有するすべての女性に対して第一選択のエファビレンツによる治療という現在の方針とを比較しました。
このモデルでは、南アフリカにおける5年間にわたる女性と子供の間の何らかの原因による死亡の予測、男性と子供へのHIV感染、およびドルテグラビル関連での神経管欠損を予測しました。
研究者らは、エファビレンツをベースとした第一選択治療の使用は、ドルテグラビルをベースとした治療と比較して主に先天性欠損症のリスクが低いという事実から、子供の死亡数を4,400件減らすことを見出しました。
しかし、ドルテグラビルをベースとした治療法により、女性の死亡者数は13,000人以上、男性パートナーへのHIV感染者数は約60,000人少なく、小児におけるHIV感染者数は7,000人以上減少すると予測されています。
総括的に見ると、この研究は、エルビレンツベースの治療よりもドルテグラビルベースの治療による死亡が少ないことを見出しています。
この研究の共著者であり、前国際エイズ協会の会長でもあるケープタウン大学のリンダ・ゲイル・ベッカー博士は次のように述べています。
「このモデル研究の結果は、女性は妊娠する可能性があるため、ドルテグラビルを服用しないようにすると言うような単純なものではありません。代わりに、これらの結果は、女性が治療の最良の選択肢について十分な情報に基づいた判断を下せるようにドルテグラビルの利点とリスクについての情報をすべて提供することの重要性を強調しています。」
また、他の研究著者らは次のように付け加えています。
「私たちの研究結果は、ドルテグラビルをベースとした治療が、先天性異常のリスクを超えた全体像としての効果を見た場合、現在推奨されている初期治療よりも、彼女のパートナーや子供たちに多くの利点があることも示唆しています。」
【以下のウェブサイトより引用】