合成赤血球は天然のそれを模倣した新しい能力が備わっている

これまで科学者たちは、柔軟性、酸素輸送、長い循環時間など、天然の赤血球の好ましい特性を模倣する合成赤血球の開発を試みてきました。

しかし、これまでのところ、ほとんどの合成赤血球には、天然の赤血球の重要な特徴を1つまたはいくつかありますがすべてではありません。

現在、査読済み科学雑誌『ACS Nano』で報告された研究において、研究者たちは細胞のすべての自然能力に加えていくつかの新しい能力を備えた合成赤血球を作りました。

赤血球（RBC）は肺から酸素を取り込み、それを体の組織に送ります。

これらの円盤状の細胞には、ヘモグロビンの何百万もの分子が含まれています。

これは、酸素と結合する鉄含有タンパク質です。

RBCは柔軟性が高いため、小さな毛細血管で圧縮されても、元の形状に戻ることができます。

また、細胞の表面にはタンパク質が含まれており、免疫細胞に飲み込まれることなく、血管を長時間循環することができます。

ウェイ・ズー氏、C.ジェフリー・ブリンカー氏と彼らの同僚らは、天然の赤血球と同様の特性を持つ人工のRBCを作成したいと考えていましたが、その作業は同時に、治療用薬物の送達、磁気ターゲッティングと毒素の検出といた新たな作業をも実行することができました。

研究者たちはまず、寄付されたヒト赤血球をシリカの薄層でコーティングし、合成細胞を作成しました。

彼らは、正と負に帯電したポリマーをシリカ-RBCの上に重ね、次にシリカをエッチングで取り除き、柔軟なレプリカを作成しました。

最後に、チームはレプリカの表面に天然のRBC膜でコーティングを施しました。

人工細胞は、サイズ、形状、電荷、および表面タンパク質が天然の細胞と類似しており、モデルの毛細血管を介してその形状を失うことなく絞られながら通過することができました。

マウスでは、合成赤血球は48時間以上持続し、観察できる毒性はありませんでした。

研究者らは、人工細胞にヘモグロビン、抗がん剤、毒素センサー、または磁性ナノ粒子のいずれかを搭載して、積荷を運ぶことができることを実証しました。

研究チームはまた、新しいRBCが細菌毒素のおとりとして機能する可能性があることを示しました。

将来の研究では、癌治療や毒素のバイオセンシングなどの医療応用における人工細胞の可能性を探っていくと研究者らは述べています。

【以下のリンクより引用】

Science Daily