多様な腸内細菌群が栄養素を阻害する有害な病原体から身を守る
日付:2023 年12月15日
情報ソース:オックスフォード大学
概要:新しい研究は、常在細菌の多様なコミュニティが病気の原因となる微生物から人間の腸を守ることができることを実証しました。
しかし、単一種の腸内細菌のみが存在する場合、この保護効果は失われます。 研究者らは保護コミュニティが病原体が必要とする栄養素を消費することで、有害な病原体の増殖を阻止していることを発見しました。
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人間の腸には、腸内細菌叢として総称される数百の異なる細菌種が生息しています。
これらがもたらす主な健康上の利点は、有害な感染症を引き起こす可能性のある侵入病原体(病気の原因となる微生物)から腸を保護することです。
しかしこれまで、この保護効果がどのようにして起こるのか、また特定の細菌種が他の細菌種よりも重要な役割を果たしているかどうかについては解っていませんでした。
これを調査するために、オックスフォード大学の研究者らは、100 種類の異なる腸内細菌株を個別に、または組み合わせて、2 つの有害な細菌性病原体である肺炎桿菌と腸サルモネラの増殖を制限する能力をテストしました。
個々の腸内細菌ではどちらの病原体も蔓延を制限する能力は大きく不十分でした。
しかし、最大50 種の群落を一緒に培養した場合、病原体の増殖効率は、個別の種で培養した場合に比べて最大 1000 分の1に低下しました。
この「コミュニティ保護効果」は、細菌をバイアル内で一緒に培養した場合でも、実験開始時に腸内細菌が存在しなかった「無菌」マウスで培養した場合でも、観察されました。
著者であるオックスフォード大学生物学・生化学学部 のケビン・フォスター博士は次のように述べています。
「これらの結果は、定着抵抗性がマイクロバイオーム群集の集合的な特性であることを明確に示しています。
言い換えれば、単一の菌株は、他の菌株と組み合わせた場合にのみ保護効果を発揮します。
しかし、研究者らは、全体的な多様性だけでなく細菌群の種類により防御レベルに重大な影響を与えていることを発見しました。
特定の種は、それ自体ではほとんど保護を提供しないにもかかわらず集合体としての保護に不可欠であることが判明しました。
研究者らは、保護細菌群集が病原体が必要とする栄養素を消費することで病原体の増殖を阻止することを実証しました。
さまざまな細菌種のゲノムを評価することにより、最も保護的な細菌群集は、病原種と非常に類似したタンパク質組成を持つ種で構成されていることがわかりました。
彼らはまた、代謝プロファイリングを使用して、保護種が病原体と同様の炭素源を要求することも実証しました。
著者のひとりでオックスフォード大学生物学・生化学学部のフランシス・スプラグ氏は次のように付け加えました。
「重要なことは、腸内細菌叢の多様性が増加すると、これらの病原体に対する防御の可能性が高まるものの、細菌群集と病原体の間での栄養素利用プロファイルの重複が鍵となります。」
細菌群集の保護において重要な役割を果たしている特定の種は、病原体と代謝が高度に重複しているため、同様の栄養を必要とします。
研究者らは、この栄養素遮断原理を利用して、異なる病原体である抗菌剤耐性大腸菌株に対して弱い防御と強力な防御を提供する細菌群集を予測しました。
実験的にテストしたところ、大腸菌株と最も多くの栄養素が重複する細菌群集は、弱い防御しか与えないと予測される群集よりも、病原体の存在量を減らす効果が最大100倍高かったのです。
研究者らによると、これらの新たな洞察は、腸内細菌叢の最適化を通じて有害な腸内病原体と戦うための新しい戦略に発展する可能性があるといいます。
また、腸内微生物叢の種の多様性を低下させる可能性がある抗生物質による治療を受けた後に、なぜ個人が肺炎桿菌などの種に感染しやすくなるのかも説明できる可能性があります。
著者であるオックスフォード大学生物学・生化学学部のエリック・バッケレン博士は次のように述べています。
「私たちの研究は、より多様なマイクロバイオームが健康上の利益をもたらす可能性があるという一般的な仮説を裏付けています。これにより、健康に有害な細菌種から保護するためにマイクロバイオームの構成を最適化するという目標が実現することが期待されます。」
【以下のリンクより引用】
Diverse gut bacteria communities protect against harmful pathogens by nutrient blocking
ScienceDaily
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