大人の脳の視力回復能力に関する驚くべき発見-大人の脳は遺伝性の失明を部分的に回復させる可能性がある-
「一部の視覚障害を持つ大人がどのようにして視覚を認識できるようになったか」についての発見は、人間の脳の可能性に関しての新しい見解を提供しています。
成人の脳が遺伝性の失明から部分的に回復する可能性があるという発見は、カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)生物科学部と医学部の研究者間の共同研究によりもたらされました。
彼らの論文は『Current Biology』誌に掲載されています。
研究チームは、レーバー先天性黒内障(Leber's congenital amaurosis(LCA))の治療法を検討していました。
この遺伝性疾患は、出生時の重度の視覚障害によって区別される遺伝性網膜疾患のグループを指します。20 個以上ある遺伝子のうちのいずれかの変異に起因するこの疾患は、網膜の光受容体の変性または機能不全を引き起こします。
合成レチノイドと呼ばれる網膜を標的とし、化学化合物を投与すると、LCAの子供の視力を著しく回復させることができます。
UCI のチームは、この治療法がこの疾患にある成人で効果があるかどうかを調査しました。
「率直に言うと、この治療法が、視覚に関与する脳回路をどれだけ救済したのかを知り大変驚きました。」
と、神経行動学の教授で、研究著者であるスニル・ガンジー氏は述べました。
ガンジー氏は、UCI の学習と記憶の神経生物学センターのフェローであり、トランスレーショナル ビジョン研究センターの一員でもあります。
「見ることには、無傷で機能している網膜以上のものが関係しています。それは、脳全体に信号を送る目から始まります。視覚が実際に発生するところは脳の中央回路にあります。」
これまでは中枢回路がそれら自体が正しく配線できるように、脳が幼少期にこれらの信号を受信する必要があると信じられていました。
LCA でマウスモデルを使用して実験を行った共同研究者は、彼らの発見に驚きました。
「中枢視覚経路のシグナル伝達、特に両目からの情報を扱う回路が成人で大幅に回復しました。」
とガンジー氏は述べました。
「治療直後、マウスの主要な経路である反対側の目からの信号は、脳内の2倍以上のニューロンを活性化しました。さらに驚くべきことは、同じ側の目の経路からの信号は、治療後に脳内のニューロンを 5 倍多く活性化させこの効果が長時間持続したのです。
脳での視覚機能の回復は、眼球で見られた改善から予想されたよりもはるかに大きいものでした。
この治療法が成人期の中心視覚経路で非常にうまく機能するということは、誘発されることを待っている視覚の潜在的な可能性があるという新しい概念を支持しています。
この発見は今後躍進が期待される研究へ繋がる可能性があります。
「脳が適応し再配線するという可能性について、その期待を裏切る発見があるときはいつでも、それより広い概念を教えてくれます。」
とガンジー氏は述べました。
「この新しいパラダイムは、この疾患を持つ成人の中心視覚経路をより完璧に救う『レチノイド療法』の開発に役立つ可能性があります。」
この研究を始めたガンジー氏と筆頭著者のキャリー・ハァー博士は、眼科の著名な教授であるクシシュトフ・パルチェフスキー博士とチームを組みました。
トランスレーショナルビジョン研究センターの所長であるパルチェウスキー博士は、レチノイドと視覚サイクルに関する研究で有名です。
視覚サイクル生化学の専門家であり、生理学および生物物理学の准教授であるフィリップ・カイザー氏が研究グループを率いました。
この研究は、国立衛生研究所(The National Institutes of Health)、退役軍人省(The Department of Veterans Affairs )、そして、失明防止研究財団(The Research to Prevent Blindness foundation)から資金提供を受けています。
【以下のリンクより引用】
Eye-opening discovery about adult brain's ability to recover vision
Science Daily
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