妊娠中や授乳中での片頭痛の管理
女性の片頭痛のパターンは様々な生殖段階と密接に関係しています。
例えば、思春期の間は片頭痛の有病率は男性と比較して女性でより顕著になり、発症すると生涯、片頭痛持ちとなります。
女性の推定40%が一生のうちで片頭痛を経験し、そして生殖年齢の女性では4分の1が片頭痛に苦しんでいます。
女性の片頭痛患者の70%までが月経中やホルモン避妊薬の使用中、妊娠中、および更年期に頭痛の頻度や重症度が変化すると報告されています。
こういった人々においての特定の課題は、妊娠中および授乳中に片頭痛を効果的な管理しつつ、胎児へ危害が及ぶリスクを最小限に抑えることです。
片頭痛を持つ多くの女性にとって、頭痛の頻度、強度、そして持続期間は妊娠中に改善されます。
調査結果は全体的には混在していますが、いくつかの研究は授乳中も同様の効果を示しました。
『現代の痛みと頭痛(Current Pain and Headache )』誌に掲載された最近の論文では、ペンシルベニア州フィラデルフィアのトーマス・ジェファーソン大学のジェファーソン頭痛センターのシミー K. パリック博士が、妊娠中、および授乳中の片頭痛に対する予防や禁忌薬品について述べられています。
彼女の調査結果をここでご紹介します。
妊娠中の片頭痛予防薬
・栄養補助食品の選択肢の中では妊娠3ヶ月より以前に服用を開始すれば、リボフラビン(400 mg /1日)とコエンザイムQ10(100 mg を1日3回)が片頭痛の予防に効果的であることが示唆されています。
・バルプロ酸およびトピラマートを含む抗けいれん薬は、一般に、それぞれ認知機能障害および運動機能障害、ならびに先天性先天性欠損症のリスクが実証されているため避けるべきです。
・ベータ遮断薬の中で、アテノロールは妊娠中期に使用されると低出生体重に関連するとされています。他のベータ遮断薬の使用は、徐脈や子宮内発育の遅延などの問題があるため密接に胎児をモニタリングが必ず必要です。
・アンジオテンシン変換酵素阻害薬とアンジオテンシン受容体拮抗薬は妊娠中は避けるべきです。
妊娠中期および妊娠後期におけるこれらの薬剤の使用は、胎児の肺、腎臓、および頭蓋骨の奇形を引き起こす可能性があります。妊娠初期での使用についての証拠は決定的ではありません。
妊娠中の使用が禁忌、もしくは安全である治療薬
・プロスタグランジンシンテターゼ阻害剤、非ステロイド系抗炎症薬は“妊娠第3期(中期)に使用されている間であは使用中に動脈管が早期閉鎖する危険性”があるためその期間の使用は禁忌だとされていましたが、最近の研究では妊娠初期にイブプロフェンを使用してもそれによる悪影響は報告されていません。
・トリプタンを服用している432人の妊娠中の女性を対象とした前向き観察コホート研究では、重大な有害転帰は認められませんでした。
・スマトリプタンが最も裏付けとなる証拠があるため、トリプタンの中では推奨される選択薬となります。
授乳中の片頭痛予防薬
・トピラマートは母乳育児中の使用には安全であるようですが、バルプロ酸は避けるべきです。 ・プロプラノロールは、母体での血漿レベルが低いため、授乳中の使用に好ましいベータ遮断薬です。
・三環系抗うつ薬は授乳中の使用は、「活性代謝物が少量で母乳に分泌されるため乳児の鎮静、摂食不良、および抗コリン作用の副作用について観察を行うべき」とされています。
・アンギオテンシン変換酵素阻害剤およびアンギオテンシン受容体遮断薬は一般的な投与量では母乳には移行しませんが、乳児が未熟児である場合は腎毒性の懸念があるとされています。
授乳中の使用が禁忌、もしくは安全である治療薬
・イブプロフェンは、頻繁に服用しても母乳に混入する薬物レベルは非常に低いレベルを示すといった研究に基づき、好ましい非ステロイド系抗炎症薬とされています。
・ナプロキセンは、幼児の眠気や嘔吐に関連しています。
アスピリンは、ライ症候群の関連リスクがあるため避けるべきです。
・スマトリプタンおよびエレトリプタンは母乳中での濃度は低いとされています。
「真の催奇形物質が乱用されている可能性がある一方で、授乳時のリスクにつながったり、妊娠中の偶発性片頭痛に使用するのは危険な催奇形物質だと誤解されている薬物療法があることも考慮し、薬剤の選択肢を慎重に考えることが臨床医にとっては重要です。」と博士は締めくくっています。
【以下のウェブサイトより引用】