実験的治療が膵臓癌に対する新しい選択肢となる可能性

2022年6月2日（ヘルスディニュース）-　新しい報告では、膵臓癌の治療において潜在的な突破口となる可能性があるものとして、患者の免疫系の重要な要素を再配線して腫瘍細胞を死滅させることができることを示唆しています。

実験的治療では、1人の患者ですでに有望であることが示されています。

キャシー・ウィルクスさん（71歳）は、67歳で診断されて以来、他の臓器に転移し、複雑で痛みを伴う治療にほとんど反応しないことが証明された進行膵臓癌に苦しんでいました。

「私はちょうどそれをやり遂げました。自分が死ぬ準備ができていなかったことは確かでした。」

とフロリダに住むキャシーさんはニューヨークタイムズ紙に語りました。

「私は心の中で『これを最高の治療にすることができる』と言っていました。」

2021年に、彼女は新しい治療法で治療されました。

ニューイングランドジャーナルオブメディシンの6月2日号に記載された新しい治療選択では、自然に感染症と戦うT細胞として知られる特定の種類の白血球に焦点を当てています。

ウィルクスさんは、再設計されたキラーT細胞を数日間注入するという単一の治療を受けました。

11日後、彼女は退院しました。

そして1か月以内に、彼女の肺の癌性腫瘍は67％以上減少しました。

オレゴン州ポートランドにあるプロビデンスがん研究所内のアールA.チリ研究所の腫瘍学者である、ロム・レイナー博士が率いる研究チームによると、ウィルクスさんは1年後も治療は順調に進んでいます。

「私たちは慎重ではあるものの楽観的です。」

とウィルクスさんはタイムズ紙に語りました。

ウィルクスさんの症例に関して報じたジャーナルによる、水曜日のブリーフィングの際に、NEJM編集長のエリック・ルービン博士は、非常に複雑な再調整プロセスが「それらのT細胞を取り出し、腫瘍細胞を殺すことができるように設計が可能」であることを示したと述べました。

本質的に、それは「非常に特殊な種類の免疫療法」であると彼は説明しました。

免疫療法は通常、患者の免疫系が癌細胞を攻撃して殺すように促す標的薬で患者を治療することです。

ルービン博士は、この成果を「励ましとなるもの」と「大きな一歩」の両方として説明しました。

理論的には、膵臓がんと「治療に比較的抵抗力のある他の疾患」の両方の治療が著しく改善される方向を示す可能性があると彼は述べました。

ルービン博士は、膵臓がんの場合、「膵臓腫瘍は治療が非常に難しく、死亡率が高く、患者が亡くなるのも早い」ということを考えると、より効果的な介入を行うことは歓迎すべき進展であると強調しました。

アメリカ癌協会（American Cancer Society, ACS）によると、この病気が全てのがん診断に占める割合は3％であるものの毎年のすべての癌による死亡の7％は膵臓癌によるものです。

ACSは、今年だけで62,000人以上のアメリカ人が膵臓がんの診断を受け、50,000人近くが死亡すると推定しています。

膵臓がんの現在の治療法には、がん細胞を取り除く手術、放射線療法、化学療法、および、または、癌細胞に極度に熱したり、冷却したりアルコールを用いて放射性周波数に曝すという手段を使用する癌細胞の非外科的殺傷（アブレーション）です。

残念ながら、患者の状態は診断時の病気の進行度によって異なりますが、結果は良好ではありません。

たとえば、腫瘍が膵臓内のみにまだ限定されている患者の中で、約42％が診断後、5年はまだ生存しているACSは述べています。

しかし、進行癌である場合、つまり癌が肺、肝臓、骨などの他の領域に広がっている場合では、5年生存率はわずか3％にとどまっています。

ルービン博士は、これまでに達成されたことは、たった1人の患者で見られた予備的な結果であると警告しました。同じ治療を受けた別の患者は反応せず亡くなりました。

「それが人々の一貫性を保って機能するという証拠はまだ実際には見られません。」

と彼は述べ、実験的アプローチは「確実な治療法にはほど遠い」と付け加えました。

それでも、一部の専門家はこの発見を”前触れ”だとしています。

「この結果は、今日一般的に使用されている、わずか数か月の利点をもたらす困難な化学療法の調合に比べて、劇的な病気の改善です。」

と、ボストンのマサチューセッツ総合病院がんセンターの医師研究者であるセザール・カストロ博士は述べています。

カストロ博士は、研究には関与していませんでしたが、「

新しいアプローチは他の患者の独特の腫瘍に合わせて個別化され、膵臓がんの転帰に打撃を与え始める可能性のある、価値のある初期の研究です。」

と述べました。

また、膵臓がんアクションネットワーク（the Pancreatic Cancer Action Network, PanCAN）のチーフサイエンスオフィサーであるリン・マトリシアン氏は、この研究結果について、

「この悲惨な病気の多くの患者に利益をもたらす可能性のある魅力的な戦略とみなされるべきです。」

と付け加えました。

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Healthday

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