小さなセンサーが癌を早期に発見する可能性

新しい研究では、癌を示す可能性があるタンパク質の間の相互作用を検出するためにナノセンサーを使用しています。

この研究は、リンパ球性白血病の早期発見に特に有用であると証明される可能性があります。

癌は、米国でも世界でも主要な死因の1つです。

国立癌研究所によると、2012年には世界中で800万人以上が癌関連疾患で死亡し、2018年には米国で60万人以上の人々がこの病気で死亡することが予想されます。

生命を脅かすこの病気の早期発見は非常に重要であり、そして医学者達は可能な限り早く癌を診断するため、より新しくより効果的な方法を考え出すことに熱心に取り組んでいます。

現在、新しい研究では、小さなセンサーを使用して、癌の原因となる可能性がある微小な分子の変化を検出しています。

ニューヨークのシラキュース大学の人文/科学学科の教授であるリヴィウ・モビレアヌ博士と、シラキュース大学の物理学科の博士研究員であるアバナシ・クメール・タッカー氏により、『Nature Biotechnology』誌に掲載されている論文で、これらのナノセンサーの役割を詳しく述べています。

モビレアヌ博士が説明しているように、ナノセンサーは骨髄を起源とし血液中に広がる癌の一種であるリンパ球性白血病の検出に特に役立ちます。

米国では、2018年には約21,000件のリンパ球性白血病の症例が新たに発生し、そのうち4,500人以上が死亡する可能性があります。

ナノセンサーのしくみ

モビレアヌ博士の研究室で開発されたナノセンサーは、いわゆるタンパク質の間の相互作用（PPI）、すなわち、細胞の発達に不可欠なプロセスを検出することができます。

いわゆるインタラクトームとは、「生体内で起こるすべての相互作用」のことです。最先端の技術的および計算技術を使用したインタラクトーム、またはインタラクトームをマッピングすることは、これらの相互作用の結果を研究する生物物理学での非常に活発なサブフィールドです。

PPIは、細胞の種類、その発生段階、環境条件など、さまざまな要因に左右されます。

一部のPPIは安定していますが、そのほどんどは一過性のものです。

例えば、遺伝子発現を活性化するのに必要な相互作用または細胞シグナル伝達および癌細胞の発生に影響を及ぼす相互作用は一時的なものです。

つまり、それらが約1ミリ秒しか続かないことを意味します。

これらのPPIは一過性という性質であるため、現在利用可能な方法では検出が困難なのです。

しかし、モビレアヌ博士の研究室から発せられたナノセンサーは、電流が通る細胞膜に小さな開口部を作ることによってこの問題を回避します。

タンパク質がこれらの小さな開口部またはナノポアを通過するとき、それらは電流の強度を変えます。

これらの変化は各タンパク質の同一性やその性質を明らかにします。

「単一のタンパク質サンプルから収集されたデータは計り知れません。」とモビレアヌ博士は言います。

彼はルーマニアのブカレスト大学で実験物理学の博士号を取得し、現在はシラキュース大学物理学科の生物物理学および生体材料研究グループの一員です。

「私たちのナノ構造により、敏感で、特異的かつ定量的な方法で生化学的事象を観察することができます。」研究者は続けます。

「その後、単一のタンパク質サンプルについて確固たる評価を下すことができます。」「ヒトゲノムの詳細な知識は、他のタンパク質との短時間の物理的関連に関与する多くの機能性タンパク質を同定するための、新たな道をを切り開きました。」

「これらのPPIの強度の大きな混乱が疾患状態につながります。これらの相互作用の一時的な性質のため、それらを評価するための新しい方法が必要とされています。」

物理学者はまた、彼のナノセンサーの微調整された検出メカニズムが癌との闘いにどのように役立つかを説明しています。

「細胞の個々の部分がどのように機能しているかを知っていれば、細胞が正常な機能から腫瘍様状態に逸脱する理由を理解することができます。

私たちの小さなセンサーはバイオマーカースクリーニング、タンパク質のプロファイリング、そして、プロテオミクスとして知られるタンパク質の大規模な研究に大きな役割を果たすかもしれません。」とリヴィウ・モビレアヌ博士。

モビレアヌ博士は、彼のナノセンサーが、血液細胞が成熟せずに通常死んでしまうが、「骨髄に蓄積して正常で健康な細胞を密集させる」というリンパ球性白血病に特に有用であることを期待しています。

【以下のウェブサイトより引用】