小児がんの治療に再利用される抗うつ薬
新しい研究では、一般的に処方されている抗うつ薬が、少なくともマウスや実験室での細胞実験において、小児肉腫として知られる種類の癌の増殖を停止させる可能性があることがわかりました。
スウェーデンのカロリンスカ研究所とテキサス州にあるMDアンダーソンがんセンターの研究者らによる発見は、この病気に対する新しい治療に希望の光がみつかりました。
この研究は、Cancer Research誌に掲載されています。
「この研究はマウスで行われており、結果が人間にどれほどあてはまるのかはまだわかりませんが、より良い治療選択を切実に必要としている若い癌患者のために、一般的な薬を転用するといった希望を与えてくれています。」
と、カロリンスカ研究所の腫瘍学-病理学科の受容体シグナル伝達病理学グループに所属していた元博士号の学生である、筆頭著者のケイトリン・クルーデン氏は述べました。
この研究では、細胞表面受容体の2つの大きなグループ、いわゆるGタンパク質共役型受容体(GPCR)と受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の共通点を調べました。
GPCRは、アレルギー、喘息、うつ病、不安神経症、高血圧症などの症状を治療するために開発されたすべての薬剤の半数以上はこれを標的としていますが、これまで癌の治療には広く使用されていませんでした。
一方、RTKは、さまざまな細胞異常に影響を与えるため、乳がんや結腸がんなどのがん治療薬が標的としています。
小児肉腫を含む多くの癌で重要な役割を果たすRTKファミリーの1つの受容体は、インスリン様成長因子受容体(IGF1R)です。
しかし、この受容体に対する抗がん剤を開発するといった試みは、以前、失敗しています。
この研究で、研究者らはIGF1Rを精査し、それがGPCRとシグナル伝達モジュールを共有していることを発見しました。
これは、GPCRを標的とする薬剤を通じてその機能に影響を与える可能性があることを意味します。
この戦略は、忍容性の高い薬剤を転用してこの腫瘍駆動受容体を沈黙させ、それによって癌の増殖を停止させるという新しい可能性を開きます。
仮説を検証するために、研究者らは小児(ユーイング)肉腫細胞とマウスモデルを、GPCRファミリーの一部である『セロトニン再取り込み受容体』を減少させる抗うつ薬であるパロキセチンで治療しました。
彼らは、この薬が悪性細胞上にある『IGF1R受容体』の数を大幅に減少させ、それによって腫瘍の成長を抑制することを発見しました。
研究者たちはまた、このクロスターゲティングの背後にある分子メカニズムを明らかにしました。
「GPCRを攻撃することによってこれらの腫瘍駆動受容体の活性を制御するための新しい方法を開発しました。」
と、カロリンスカ研究所の腫瘍病理学部の研究者であり、研究の主任研究者であるレナード・ギルニータ氏は述べています。
「私たちの知る限り、これは癌関連の受容体チロシンキナーゼのクラス全体の新しい模範を表しており、事実上すべての病気における特定の治療薬を合理的に設計するための出発点として使用できます。これは、すでに臨床で使用されており、毒性が低い膨大な数のGPCR標的薬があることを考慮すると特に重要です。」
次に、研究者は、複数の受容体チロシンキナーゼを選択的にクロスターゲットし、臨床現場での発見を検証するための戦略を開発しようと計画しています。
【以下のリンクより引用】
Anti-depressant repurposed to treat childhood cancer
Medical Xpress