小型の移植片が1型糖尿病を長期で救済
1型糖尿病に疾患する人々は、小型の生体工学的インプラント(移植片)を介して体の血糖値を調整する能力が回復できるとEUが資金提供する
プロジェクトで開発されている革新的な治療法で恩恵を受けられるようです。
EUが出資した『DRIVE財団』は、世界中の何百万人が罹患している高血糖を特徴とする慢性疾患である1型糖尿病(T1D)を管理するという、
治療上の課題に対する長期的な解決策の提供を目指しています。
1型糖尿病は、通常は血糖調節インスリンを毎日注射することで、注意深く制御されなければ眼、腎臓および神経終末を損傷し、
心不全を引き起こし、早死につながる可能性があります。
DRIVEで開発された新しいシステムでは、『インスリン注射』の必要性が排除されています。
その代わりに、『βシェル』と呼ばれる安全な天然材料で作られた生体工学カプセルが、低侵襲治療により患者の腹部に埋め込まれます。
このカプセルは、健康な人では、膵臓から血糖を制御するためにインスリンを分泌する責任がある膵島細胞で満たされた「βゲル」と呼ばれる
ゲルが含まれています。
これらの移植されたβ細胞はT1D患者の体内でインシュリンを産生し、交換用のインプラントが必要になるまでの5年間は健康に普通の生活を
送ることができます。
DRIVEによるこのβシステムは、ドナー膵臓からの膵島細胞の移植を含むT1D糖尿病のための既存の治療法であるものの滅多に使用されない治療法を大幅に進歩させます。
1年か2年だけではありますが、患者は自然な血糖コントロールができます。
治療費が高いことと、いくつかの『ドナー膵臓由来のの膵島細胞の移植』が必要であること、および患者の体が移植細胞を拒絶する危険性が高いことから、現在は、T1Dの最も重篤な合併症を発症した成人にのみ、適用されています。
目標をクリア
プロジェクトマネージャーでアイルランド王立外科医学院のジャニス・オサリバン氏は、次のうように述べています。
「DRIVEプロジェクトは、『膵臓β細胞』を効果的かつ賢明にターゲットを絞った方法で提供するための、全く新しいシステムを開発することで、
これらの課題を解決します。
これにより、細胞移植に必要なドナー膵臓の数が少なくなり、より多くの患者がより効果的に長期にわたる治療を受けられるようになります。」
ドナー膵臓からβ細胞を取得するために、DRIVE財団は、現在の技術よりも単一膵臓からより精製されたβ細胞の抽出を可能にする、
実験室試験で最適化されたバイオエンジニアリング酵素を用いたプロセスを開発しました。
通常の膵臓環境を模倣する『βゲル』が追加された細胞は生き残ることができ、血糖を検出し、インスリンを分泌し続けることができます。
カプセル化されたβシェルは、細胞を身体の免疫システムから保護し、拒絶反応のリスクを最小限に抑え、患者の長期的な免疫抑制薬の必要性を減らします。
臨床試験と商品化
前臨床試験では非常に有望な結果が示されており、近い将来、さらなる開発およびヒト臨床試験の段階へ進む予定です。
DRIVEのパートナー企業は、βシステムの商品化に備えて最適化されたスケーラブルな製造プロセスを設計しています。
この技術について5件の特許を申請したパートナー企業はまた、1型糖尿病の小児におけるインスリン依存症の解消に重点を置いた
高度治療法を開発する姉妹プロジェクトである、同様にEUが出資した『DELIVERプロジェクト』にも協力しています。
世界保健機関(WHO)によると、1型および2型糖尿病の直接医療費は、世界中で3億8,200万人を超える人々に負担をかけており、
年間医療予算の最大15%を占めています。
直接医療費は5つのEU加盟国(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス)だけで年間900億ユーロを超え、この疾患による仕事の欠勤、
早期退職、社会的支援などの間接費用も同様の金額が発生しています。
アイルランド国立大学ゴールウェイ校のプロジェクトコーディネーターであるギャリー・ダフィー氏は、
DRIVEで行われた開発は1型糖尿病の社会的および経済的負担に大きな影響を与えるだろうと述べています。
「DRIVEの革新的な技術は、血糖を効果的に調節するために必要な膵島の数を減らし、そして外科的安全性を向上させることで合併症を軽減し、
免疫防御の局所化と血糖コントロールの改善により、ドナー膵臓からの膵島採取を最適化することによって、糖尿病および膵島移植の直接費用を最小限に抑えます。」
【以下のウェブサイトより引用】