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心不全患者の90%がライフスタイルを変えない

研究者らは、運動や水分補給、塩分の摂取などの生活習慣の変更を行うのは、心不全患者の10%以下であると述べています。

アメリカでは、約600万人が心不全を患っています。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、心不全患者の半数が診断後5年以内に死亡しているといいます。

ライフスタイルを変化させなかったり、処方薬をきちんと服用しないことで、症状の悪化や入院のリスクが高まります。

しかし、新しい研究によると、症状を改善させるための医師による推奨事項に従ったのは、患者の10%以下であったといいます。

研究者らは、孤独でいることが医師の指示に従わない最大の原因である可能性を見出しました。

「推奨されるライフスタイルの順守率が低いことは元々予測していましたが、患者の7%しか従っていないとは想定外でした。」と、研究著者の1人であり、ポーランドにあるヴロツワフ医科大学臨床看護学部の研究員であるNatalia Świątoniowska氏はHealthlineの取材で述べています。

この研究は5月末に行われた欧州心臓病学会の年次総会にて発表されました。

調査結果は、査読付きジャーナルではまだ発表されていません。

この研究によると、ライフスタイルの4つの変更点は以下となります。

  • 体重の変化を観察する
  • 塩分摂取を減らす
  • 水分摂取を減らす
  • 運動を増やす

研究者らは、これらの推奨事項への順守の定義として、体重チェックは「毎日」もしくは「週3回」、塩分と水分、運動については「ほとんどの時間」もしくは「常に」実施することとしています。

「最も順守率が低かった推奨事項は身体活動の増加、塩分と水分摂取の減少です。」と、Świątoniowska氏は言います。
「塩分や水分摂取量の制限は患者や介護者にとって簡単であると思えたため、この結果には驚きました。」


- 推奨事項への順守が不可欠である理由
カリフォルニア州にあるトーランス・メモリアル・メディカルセンターに務める心臓専門医であるビクトリア・シン医師は、心不全の症状として体液貯留があるため、水分摂取を制限することでこの問題に対処できると説明しています。

水分が身体に貯留されると「症状の一つとして体重が増加するため、これは1~2日程度で確認できる」ため、毎日の体重測定も重要であると、シン氏はHealthlineの取材に対して話しました。
「こうした症状は、息切れや腫れなど、その他の心不全症状が出る前に起こる可能性があります。」

彼女は、塩分摂取量を減らすというアドバイスには注意が必要であると説明しています。

「食事から摂取する塩分は水分の貯留を促進し、症状を悪化させます。」と、シン氏は言います。
「私たちは心不全患者に、ナトリウム摂取を1日2,000mg以下に制限するよう指示しています。しかし、科学文献のレビューでは、心不全患者には塩分制限が絶対に必要であるという綿密な証拠に裏付けされたデータは存在しないことがわかっています。」


- 心不全は管理できる
ニューヨークにあるマンハッタン心臓病専門医の創業者であるロバート・セガル医師は、心不全を患う人は活動的な生活を送ることができると述べました。

「心不全とは心臓が十分な血液を送り出せていない状態であり、これにより体内の酸素が不足します。」と、セガル氏は述べました。
「これは深刻な状態ではありますが、心不全を患う人は人生を満喫できないという意味ではありません。心不全は、管理することができます。」

「全体的に、治療法の進歩によって心不全の予後は年々改善してきています。」と、シン氏は付け加えました。

しかし彼女は、心不全によるダメージで心筋が傷つくことがあると警告しました。
この場合、回復できるのは部分的、もしくは回復不可能となります。

「しかし、これもまた原因によります。」と、シン氏は言います。
「この損傷が薬物乱用によるものであれば、薬物の使用を止め処方薬を服用することで、多くの場合心筋を回復させることができます。もしアテローム性動脈硬化症が原因であり、動脈の閉塞が改善できる可能性がある場合は、心筋も回復する可能性があります。」

セガル氏は、その他の原因には重度の肺疾患や糖尿病、肥満、睡眠時無呼吸などが含まれると付け加えました。

「これらの疾患を患う人は、直ちに対処しないと心不全を発症する恐れがあります。」と彼は言います。


- 心不全の症状
シン氏によると、心不全の症状には、疲労感や活動時の息切れ、横になった際の呼吸困難、息切れによる夜中の目覚めなどがあるといいます。

また心不全を患う人は、足が腫れたり、数日で急激に体重が増えたり(体液貯留による)、咳が持続することがあります。

アメリカ心臓協会は、これらの症状の内1つのみがある場合は心配する必要がない可能性もあるものの、2つ以上の症状が見られる場合は医療機関で心臓の検査を受けるべきであるとしています。
これは、過去に心臓障害の診断を受けたことがなかったとしても、重要です。

セガル氏は、心不全の危険因子には、心臓病における一般的な危険因子である高血圧や高コレステロール、糖尿病、肥満、喫煙、アルコール乱用、薬物乱用などが含まれると言います。

しかし、リスクには避けることが困難な「心筋障害の家族歴、心臓の化学療法、心筋に影響するウイルス性疾患などが心不全を引き起こすこともある」といいます。


- 慎重な対処が必要
Świątoniowska氏は、この研究結果では、長期治療の推奨事項に対する患者の順守率が低いという問題に対処するためには、特別な介入が必要であることが示されたと言います。

「医療従事者は、患者の日常業務における推奨事項の順守率を向上させるための対策方法を考える必要があります。」と彼女は話します。

また、社会的支援と健康の間にも密接な関連があります。

Świątoniowska氏は、以前の研究で、社会的孤立が心不全患者に悪い影響を与えることが明らかになったことを指摘しました。
社会的孤立は、診察の予約を取ったり、薬を服用したり、ライフスタイルを変更する上で悪影響を及ぼしました。

セガル氏はこれに同意し、次のように述べています。

「患者へのサポートやアドバイスにおいて、家族は重要な役割を果たします。」と、彼は話します。
「特に高齢の患者においては、薬を飲み忘れたり、薬が必要ではないと感じてしまうのは良くあることです。患者のフォローアップを行い、適切な薬を決められた時間通りに服用し、適切な食事や運動を行えるか否かは、家族にかかっています。」


- まとめ
最近の研究では、医師に推奨された重要なライフスタイルの変更を順守しているのは心不全患者の10%未満であることがわかりました。

研究者らは、この研究結果では、推奨事項の順守しないことの大きな原因として、患者の孤立があることが示されたと述べています。

心不全は深刻な状態ではありますが、きちんと処方薬を服用し医師の指示に従うことで、予後は良好になります。

専門家らは、医師や介護者が、心不全患者が必要事項を守り、上手く症状を管理できるように注意深く見守ることが解決策であることに同意しています。

出典:2019年6月2日更新 Healthline 『90 Percent of People with Heart Failure Don’t Make Lifestyle Changes』(2019年6月4日に利用)
https://www.healthline.com/health-news/most-people-with-heart-failure-conditions-dont-follow-prescri...