抗生物質を作用させ続けるために
抗生物質のない世界を想像してみてください。
一般的な病気、怪我、医療処置でも生命が脅かされる場合があります。
そしてHIVは再び致命的となります。
もっとはるかに多くの患者が結核で亡くなるでしょう。
出産は母と子の両方にとってはるかに危険なものになります。
私たちがともに行動しなければ、そういった世界はまた現実になる可能性があります。
発見以来、抗生物質は現代医学の基礎として役立っています。しかし、人間と動物の健康における抗生物質の持続的な過剰使用と誤用により、 微生物、細菌類が抗菌薬の薬効を止める能力である、抗生物質耐性の出現と拡散が進んでいます。
その結果、感染が拡大し他人にまで広がってしまうのです。
抗菌薬耐性(AMR)の出現は、基本的な感染症の治療を困難にし、場合によっては治療を不可能にしてしまい、手術のリスクを高める「スーパーバグ」を生み出しています。
予測では、2050年までに、癌よりも多くの人が細菌感染で死亡することが示唆されています。
AMRは健康上の主要な脅威になっており、国連総会では、エボラ出血熱やヒト免疫不全ウイルスまたはHIVへの対応とともに取り組む重要な 健康問題としてAMRを含めるようになっています。
抗生物質の誤用と過剰使用は、医学研究の速度を超えて、抗菌薬耐性のプロセスを加速しています。
そして、微生物の耐性の出現は継続的な現象となっていますが、その増幅と広がりは、人間が取った行動の結果なのです。
規制緩和、社会経済条件、人口統計など、アジア太平洋地域特有の要因によりこの地域はAMRの震源地となっています。
多剤耐性結核(MDR-TB)の台頭そして、肺炎を治療するだけのために法外に高価な点滴薬へ依存している影響がすでに確認されています。
これらを総合すると耐性の開発は、家族にも国家にとっても、医学的、社会的、財政的に大きい悲惨な結果をもたらすのです。
それでは、私たちは何ができるのでしょうか。
医師は、すべての薬を本当に服用する必要がある理由を人々に説明するためにより骨を折る必要があります。
それに失敗すると再び細菌に感染するだけでなく、細菌が悪化してしまい、次回、同じ薬を使用することはできません。
私たちが使用できるいくつかの薬を一巡してしまえば他の選択肢はありません。
また、ワクチンを使用する必要があります。
既存のワクチンをより有効に活用し、新しいワクチンを開発することは抗生物質耐性に取り組み、予防可能な病気と死亡を減らすための重要な方法 です。
製薬会社も同様の措置を講じることができます。 1つは、治療薬のコースを短くすることです。
たとえば、アジスロマイシンは現在、より短い治療コースで使用され、人々が最後まで薬を飲み切る可能性を高めています。
獣医師と動物保健従事者は、適切な薬物、適切な用量、適切な時間、適切な経路、適切な犬種、動物が罹患する適切な病気などを考慮し、 必要な場合にのみ抗生物質を処方する必要があります。
一方で、薬剤流通業者と小売店も同様に、抗生物質の販売前に患者が適切な処方箋を持っていることを確認することで、AMRと戦う責任を共有する必要があります。
抗菌薬耐性と抗菌薬を使用するために医師や獣医による監視のための指針を策定する必要があります。
とりわけ、新世代の抗生物質を開発するために、研究開発に費やす必要があります。
フィリピン政府は、2014年にAMRの脅威に対抗する行動の呼びかけに応答した最初の国の1つであり、2014年にフィリピンでの抗菌薬耐性と闘うための国家行動計画の策定とその実施に関する省庁間委員会を設立しました。
抗生物質耐性のさらなる拡大を回避し、抗生物質の作用を維持するためには、こういった取り組みやその他の取り組みにも、さらなる支援と責任を 持った遂行が必要です。
【以下のリンクより引用】
To keep our antibiotics working
INQUIRER.NET