抗精神病薬は危篤状態の患者のせん妄治療に効果的?
新しい研究によると、ハロペリドールなど重症患者のせん妄を治療するための多くの病院で使用される抗精神病薬は、重症患者においては、意識が混濁または昏睡状態のいずれかの状態にある期間をプラセポほど効果的に減らせないことがわかりました。
せん妄、または重度の混乱と見当識障害は、多くの場合、危篤状態の患者が経験します。
せん妄と死亡率との間に因果関係が確立されてはいませんが、せん妄を発症した重症患者は3日から6ヶ月以内までに死亡する可能性が高くなります。
せん妄はまた、危篤状態の患者とその家族の両方へ苦痛や不快感を味あわせてしまいます。
イギリスワトフォードにあるワトフォード総合病院のヴァレリーページ博士率いる研究グループは、人工呼吸を装着している141人の重症患者でせん妄に対するハロペリドールの効果試験を行いました。そのうち患者の半数の71人にはハロペリドールで治療を行い、残りの70人の患者へは、プラセボを投与しました。
ハロペリドールの用量は、せん妄のコントロールに使用される既存の臨床実践に基づいて投与され、患者は慎重に薬剤に対する副作用についてモニタリングをされていました。それと同時に、過鎮静についてもモニターされました。
治療薬の投与を行った臨床医も、データーを分析した研究者もどちらも研究グループ内の患者についての情報は認識していませんでした。
研究者は、プラセボ群と比較して、ハロペリドールは試験開始後14日目まで、せん妄や昏睡を起こさずに過ごした日数には影響しなかったことを見出しました。
また薬は、研究開始後、最大28日間までの間の死亡率、危篤状態や入院の長さや、28日間までの人工呼吸器をつけない日数にも影響しませんでした。
せん妄の治療における有効性の欠如にもかかわらず、試験結果は、ハロペリドールなど特定の薬物は、依然として急性攪拌の短期的な管理のために有用であることを示唆しており、プラセボが投与された患者よりも少ない鎮静を必要とするように見えたことを示しています。
「限られた基礎証拠があるにもかかわらず、患者数の増加は、せん妄を管理するためにハロペリドールが投与されています。」
「我々の実験結果は、ICUでの治療中に早期に開始したときに一般的に使用されるハロペリドールの投与量で、人工呼吸器を必要とする重症患者でせん妄が低下するということはないということを示唆しています。」 と博士は述べています。
「ハロペリドールは、この患者グループでは安全に使用することができますが 、我々の出した結果では、重症患者において、ハロペリドールによりせん妄期間が変わるということはありません。
せん妄の防止、または軽減し、集中治療も含め、有害転帰を改善する薬剤を認識することは、せん妄の研究内で優先順位をあげる必要があります。」
「ハロペリドールは、一般的に使用されていますが、せん妄を処置するための使用は正当化されてはいないようです。」と、リセのヨアナスクロビック博士とカナダのモントリオール大学のジーンセイン クリティカルケア議長は、コメントを残しています。
スクロビック博士は、「非薬理学的な予防措置が重症患者における、せん盲の発生を低減することが示されています。」と付け加え、せん妄も薬剤を用いて治療する必要があるかどうかについても疑問を呈しています。
「非薬理学的介入は、精神的、心理的な擾乱にはとても有効です。問題は、せん妄の症状が患者を介護する人たちに引き起こす苦痛にあります。
私たちは、患者さんや私たち自身に不快となるような治療を行っているのだと、自分自身に問うべきではないでしょうか?」
出典:http://www.thelancet.com/