携帯型呼吸モニターが命にかかわる肺疾患を迅速に検出
科学者は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を正確かつ迅速に検出できる携帯型呼気分析装置を開発しました。
このデバイスは、生命を脅かす可能性のある肺疾患のある人々の生存率を高め、医療費を削減します。
研究チームは、電子ジャーナル「Analytical and Bioanalytical Chemistry(分析化学および生物分析化学)」に掲載された論文の中で、ほぼ靴箱のサイズというコンパクトな新技術の開発とテストについて説明しています。
ARDSのタイムリーな診断と追跡は、状態が急速に変化して進行する可能性があり、いくつかの原因が考えられるため、非常に困難です。
「最も一般的に使用されているARDSの予測装置でも、正確度は約18%のみです。」
と、アナーバーにあるミシガン大学の生物医学工学部の教授であり共同研究著者のファン・シュドン博士は述べています。
対照的に、彼と彼のチームは、完全に自動化された携帯型呼気分析装置が約30分の所要時間、90%の精度でARDSを診断できることを示しました。
研究者は、ミシガン大学病院で治療を受けている48人のボランティアでこの技術をテストしました。ボランティアのうち、21人にARDSがあり、他の人は対照群でした。
「私たちが発見したのは、患者がARDSに陽性であることを装置が示している場合、患者が陽性である可能性が高いことです。」と博士は説明します。
診断および監視ツール
このデバイスの技術は、ガスクロマトグラフィーを使用して、呼気中のほぼ100個の分子を分析します。
人工呼吸器の吸入口に接続されているチューブを通して呼吸のサンプルを吸入します。
分析の結果により、医師はARDSの検査だけでなく、状態がどの程度進行しているかを判断することもできます。
このデバイスは、診断後の治療の進行状況も監視できます。
「X線と血液検査による変化を確認する前に疾患の発症を検出し改善することができます。」とファン博士は説明します。
ARDSを発症するほとんどの人は病院におり、他の健康状態での治療を受けています。
ARDSが病院の外で発症することはまれです。発症した場合、その人はすでに重度の肺炎または同様の重篤な状態にあります。
米国・国立衛生研究所(NIH)の本研究に関する情報によると、米国では毎年約200,000人がARDSを発症し、74,000人がこの疾患で死亡しています。
肺炎、敗血症、外傷、および誤嚥は、ARDSの原因の1つとなっています。これらにより、肺が炎症を起こし、液体が充満します。
液体は、酸素や二酸化炭素が血液を通過するための肺の小さな空気嚢をふさぎます。
ARDSの患者は通常、肺が治癒するまで機械的に、人工呼吸器による集中治療とサポートが必要です。ただし、ARDSを克服した人の多くは、肺機能が依然として低く、そのため、肺を通常通りの機能に戻すのが困難であることがあります。
早期の検出と追跡
早期にARDSを検出することは、回復の可能性と回復後の状態を改善させるための鍵です。
「ARDSでの予後を改善する能力は、病気を早期に迅速かつ正確に診断し、その進行を追跡できる技術がなかったことで元々進歩があまりないものでした。」
と、ミシガン大学で救急医療及び、生物医療工学の教授を務め、本研究の共同研究著者であるケビン・R・ウォード博士は述べました。
ARDSを診断する現在の方法は、胸部X線に依存しています。胸部X線は費用がかかり、放射線被曝を伴い、血液検査は観血的です。
これらの手順は結果を出すのに何時間もかかり、医師は進捗を監視するためにそれらを繰り返す必要があります。良くても疾患が以前はどんな状態であったかを示すことができるだけで、リアルタイムでの追跡ができません。
「現在のすべての方法は、治療が遅すぎるか、治療法がすぐに効果を上げているかどうかを示す情報を持っていないという結果につながります。」とウォード博士は説明します。
「呼気を利用することで、私たちが開発した技術は両方の問題を解決し、早期治療を可能にし、ARDSの多くの精密医療による治療法を開発する大きな機会を切り開きます。」
チームは、肺炎、喘息、敗血症など、肺または血液に影響を与えるいくつかの他の炎症状態をより迅速に診断し、より適切に追跡する技術の開発を見越しています。
【以下のウェブサイトより引用】
Portable breath monitor quickly detects life threatening lung disease
MEDICAL NEWS TODAY