新しいコレステロール薬を買う余裕がないと心臓発作、脳卒中は増加する

（ロイターヘルス） - 新しいコレステロール低下薬を買うことができない心臓病のリスクが高い患者は、新しい薬を買う事ができた人と比較して、1年以内に心臓発作、脳卒中およびその他の心血管疾患を発症する可能性が高いと研究で示されています。

この臨床試験では、『PCSK9阻害剤』と呼ばれる新薬が、悪玉コレステロール（LDL）を大幅に低下させ、高コレステロールの第一選択薬であるスタチン薬で十分な効果がみられない人々の心血管転帰も改善することが示されています。

新薬の問題となっているのは薬価です。

アメリカ心臓協会（American Heart Association）によると、新しい調査の対象期間中、米国でのPCSK9阻害薬の価格は年間で約14,000米ドルでした。そのため、製薬会社は患者の入手状況を改善するために価格を下げるよう奨励されました。

患者が保険に加入している場合でも、これらの薬の自己負担費用は法外なものになる可能性があるということが、以前の研究で示されています。

同共同研究者のケリー・マイヤーズ博士は、次のように述べています。

「それは1年足らずで有益な効果があることを意味します。」

マイヤーズ博士は、高いコレステロール値を引き起こす遺伝性疾患である、『家族性高コレステロール血症（FH）』に焦点を当てた、非営利の研究および擁護団体である『FH基金』の最高技術責任者です。

患者が新薬を入手できないことでの影響を詳しく調べるために、研究者らは、2015年8月から2017年12月の間にPCSK9阻害剤を処方された高コレステロール血症の139,036人の成人に関する医療保険請求データを調べました。

データを分析し研究者らは、88,770人の患者（63.8％）がアテローム性動脈硬化症の既往歴があり、2,899人（2.1％）が家族性高コレステロール血症と診断されていました。

保険会社は処方箋の3分の2近く（61％）を拒否し、一方で15％の患者は処方箋を入手しませんでした。これは恐らくは自己負担のためだと研究者らは述べました。

338日以上PCSK9阻害薬を服用していた患者と処方をが拒絶した患者を比較すると、心臓発作、脳卒中、心臓バイパス手術などの心血管疾患のリスクが16％増加しています。

同様に、338日以上、PCSK9阻害薬を服用したことのある患者と処方箋を入手できなかった患者を比較すると、同じ11.5カ月の期間で心血管疾患のリスクが21％増加したと同著者らは『Circulation：Cardiovascular Quality and Outcomes』の中で報告しました。

「この現実的な証拠は、心臓血管疾患または家族性高コレステロール血症の治療を受けている8万人以上の人が、PCSK9療法の処方が拒否または満たされなかった場合には、心臓発作および脳卒中のリスクが有意に高かったことが強調されています。」とマイヤーズ氏は言います。

「特にFHのような遺伝的疾患を持つ人にとって、個人の高いリスクを考慮に入れない補償範囲の決定は、心臓発作、脳卒中および死亡を防ぐための私たちの健康システムにおいては失敗です。」

マウントシナイ病院イカーン医科大学医学部の准教授である、心臓専門医のメアリー・アン・マクラフリン博士は、この新たな発見はさらなる研究を促進するはずであると述べました。

「チャートレビューと請求データを見るだけでは定量化できないものがあるため、これをベースラインとして使用する必要があります。」

とマクラフリン博士は言います。

「一部の処方が拒絶されたことには正当な理由がある可能性があります。」

興味深い発見は、処方を受けてもそれを完了できなかった人の間で21％高いリスクがあることだとマクラフリン博士は述べました。

「これらの患者さんは、健康的な食事へのこだわりなど、他の種類のライフスタイルの変更を行っていないか、または喫煙している可能性がありますが、ここからはわかりません。」

ジョンズホプキンスブルームバーグ公衆衛生大学の内科医であるアルバート・ウー博士は、患者がそれを買う余裕がない場合、薬がどれほど良いものであるかなど重要ではないと言います。

「この薬の可能性が、支払いシステムによってあきらめざるを得ない状況になっています。このシステムが、患者がこれらの薬や他の新しい薬を買うのを難しくしています。」

【参照記事】

Heart attacks, strokes increase when patients can't afford newer cholesterol drugs