新しい代替細胞増殖経路が転移癌のより良い治療法につながる可能性
研究者は原発性癌細胞がどのように増殖するかについて基本的に理解していますが、転移、すなわち癌が広がる致命的な過程については
あまりわかっていません。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の歯学部長で歯周病学の教授であるポール・クレブスバッハ博士が率いるチームは、
昨年、彼らが発見した遺伝子である『mEAK-7』が、少なくとも肺がんのがん転移に重要な役割を果たす可能性があることを発見しました。
ヒトの細胞におけるその初期の遺伝子発見に基づいて、研究チームは、いくつかのデータベースから得た腫瘍細胞遺伝情報、
ならびに癌患者からの組織サンプルを用いて、正常細胞と癌細胞においての、mEAK-7の発現レベルを比較しました。
「非小細胞肺癌に焦点を当てることにより、細胞増殖とその移動に重要なmEAK-7が転移性非小細胞肺癌で、
高い割合で発現していることがわかりました。」
と、最初の著者でポスドク研究員である、国立がん研究所のジョー・グエン博士は述べました。
「我々はまた、mEAK-7が原発性癌細胞では発現していたものの、非癌性細胞では発現していなかったことを発見しました。
これは、このタンパク質が癌転移における重要な原因となりうることを示しています。」
この研究はiScience誌に掲載されました。
研究者らはまた、mEAK-7を、DNA修復の調節を助け、癌の増殖を抑制または促進する、『DNA-PKcs』と呼ばれる巨大分子と組み合わせると、
癌細胞の成長および増殖のために癌細胞によって使用されるシグナル伝達経路である代替となるmTORを作り出しました。
正常細胞では、2つのよく研究された経路が、正常細胞の成長と増殖、および生存を調節するmTORと呼ばれる遺伝子によって制御されています。
「この第3の複合体または経路は、コロニー形成および細胞増殖の過程を開始し、ほとんどの癌における主要な死因である転移をもたらす
癌幹細胞にとって非常に重要なものです。」
とクレブスバッハ博士は述べました。
「我々は、転移性癌患者の腫瘍、およびリンパ節には高いレベルのmEAK-7タンパク質が存在することを確認しました。
mEAK-7阻害剤の開発は、高レベルのmEAK-7に関連する異常なmTORシグナル伝達を示す、転移癌患者には利益があると思われます。」
癌幹細胞におけるこれらのシグナル伝達分子についても調べた研究者らは、癌細胞における新規の「第3のmTOR複合体」は、
mTOR、mEAK-7、およびDNA-PKcsで構成されていると判断しました。
共同執筆者でUCLAの歯科プロジェクトの科学者であるキム・ジンクー博士は、次のように述べています。
「現在、固形腫瘍の治療法には外科手術や放射線療法があります。しかし、標的腫瘍は放射線や他の治療法に対する耐性を発現し多くの患者が癌を再発します。
この耐性は癌細胞におけるより高いmEAK-7の発現と相関することがわかりました。」
【以下のウェブサイトより引用】