新しい化合物はうつ病による記憶喪失を治療できるのか?
記憶喪失は、認知症などの神経変性疾患でのみ起こるわけではありません。
年齢とともに、あるいはうつ病などの精神的な健康問題に関連しても起こります。
今日、研究者はこの認知効果を逆転させることができる新しい化合物を開発しました。
記憶喪失は、認知症特有の症状ではありません。それはまた老化プロセスの自然な部分である場合もありますが歓迎されるものではありません。
記憶障害はまた、精神的苦痛を経験している人々、特に鬱病などに疾患している人においても起こりえます。
例えば、昨年、医療雑誌『Neurology』誌に掲載された研究では、うつ病の顕著な症状を示していた人々にも、特定の出来事を思い出す記憶のタイプである、エピソード記憶が乏しいということが示されました。
最近、カナダのトロント中毒・精神保健センターの研究者たちは、うつ病と年齢の進行に関連していると考える記憶喪失を元に戻すことができる新しい化合物を開発するため、懸命に取り組んでいます。
「現在のところ、うつ病、その他の精神疾患、加齢に伴う記憶喪失などの認知症状を治療するための薬はありません。」
と研究者のエティエンヌ・シビル博士は述べています。
しかし、研究者らが前臨床試験でテストを行った新しい化合物は、記憶喪失を迅速に元に戻すことに加えて、そもそもこれらの問題を引き起こす根本的な脳のメカニズムを「修正」するようです。
シビル博士らは、その化合物を発見し、現在の結論に達するための一連の研究を行いました。
そして彼らは『Molecular Neuropsychiatry』誌に最新の研究成果を発表しました。
チームはまた、今週初めにワシントンDCで開催された米国科学振興協会年次総会でも発表しました。
システムの欠陥をターゲットに
彼らの研究の第一段階で、シビル博士らはGABA神経伝達物質系における脳細胞受容体の破壊を探し、それを発見しました。
以前の研究では、『GABAシステム』がうつ病や不安などの精神的健康問題に大きく関係していることがわかっています。
このシステムはまた、特定の脳細胞とそれらの活動の間のコミュニケーションを調整するのを助けます。
研究者達によると、GABA系の受容体の機能障害はまた、うつ病や加齢に関連する記憶喪失を引き起こす可能性があります。
進行中の研究において、科学者たちはこれらの欠陥のある受容体に結合し活性化することを目的とした一連の分子を開発しました。
研究者らは、これがベースラインメカニズムを修復し、それによって記憶喪失の症状を改善するのではないかと疑いました。
新しい化合物は改質型のベンゾジアゼピンで医師も不安の治療に使用しており、そしてGABA神経伝達物質システムを活性化することができる一種の鎮静薬です。
マウスモデルを用いた前臨床試験では、研究者らはストレス誘発性記憶喪失を示した、マウスに新しい化合物を1回投与しました。
30分以内に、記憶機能は再び正常になりました。科学者たちは、介入を15回以上繰り返した後にこの結果にたどり着きました。
メカニズムの修復、記憶力の向上
別の段階で、研究者らは加齢による記憶障害の前臨床モデルを研究しました。
これらの場合においても、
チームが新規分子を投与した直後に記憶力の問題は治まりました。
さらに、この状況では、モデルの認知能力は80%に増加しました。これは、若年または早期成人の脳のレベルです。
研究者がこの治療薬を毎日投与すると、プラスの効果は2ヶ月以上続きました。
「老化した細胞は、若い脳細胞と同じように見えるようになり、私たちの新しい分子は症状の改善に加えて脳を改善することができることを示しています。」
とシビル博士は述べました。
シビル博士と彼のチームは、今から約2年後を目処に、人間の参加者での臨床試験で、この新しい化合物の安全性と有効性のテストを始めようとしています。
「この分子が脳に入り、安全に標的細胞を活性化し、そして記憶喪失の認知障害を回復させることを我々は示しました。」と研究者は言います。
チームはまた、それらの用途は精神的疾患に関連した認知問題から初期のアルツハイマー病で起こる記憶喪失まで、応用できる範囲は恐らく広くなるために、この研究がそれに向けた重要な前進であるとも述べています。
【以下のウェブサイトより引用】