新機序の悪性軟部腫瘍治療薬
2015年12月7日、抗悪性腫瘍薬トラベクテジン(商品名ヨンデリス点滴静注用0.25mg、同点滴静注用1mg)が発売された。本薬は、9月28日に製造販売が承認され、11月26日に薬価収載されている。適応は「悪性軟部腫瘍」で、1回1.2mg/m2(体表面積)を24時間かけて点滴静注し、少なくとも20日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する。
悪性軟部腫瘍とは、脂肪、筋肉、神経、血管などの軟部組織に発生する悪性腫瘍であり、予後不良の重篤な疾患である。日本における発生率は10万人あたり2~3人であり、全ての悪性腫瘍のうち1%未満の稀な疾患である。
国内において悪性軟部腫瘍の適応を有する抗悪性腫瘍薬は、注射製剤のドキソルビシン(商品名アドリアシン他)、イホスファミド(商品名イホマイド)、経口製剤のパゾパニブ(商品名ヴォトリエント)の3種類で、これらの薬剤が臨床使用されていた。しかし、悪性軟部腫瘍は組織型ごとに化学療法に対する感受性が異なることから、多くの化学療法の選択肢が必要と考えられている。そのため新たな作用機序を持ち有用性が高い薬剤の開発・承認が強く望まれていた。
トラベクテジンは、カリブ海産のホヤの一種Ecteinascidia turbinataから単離された、3つのテトラヒドロイソキノリン環を有するアルカロイド化合物である。現在は合成法が確立されている。
本薬の作用機序は完全には解明されていないが、DNAの副溝部分に結合することでDNA修復機構などに影響をおよぼし抗悪性腫瘍作用を発揮すると言われており、既存の薬剤とは異なった新しい作用機序を有する薬剤である。
海外では「アントラサイクリン系薬剤およびイホスファミドに無効、またはこれらの投与が適さない進行悪性軟部腫瘍」に対する適応で2007年9月にEUで承認されて以降、2015年10月までに世界78カ国で承認されている。
日本では、ベストサポーティブケア(BSC)群とのランダム化国内第2相比較試験が実施され、BSC群に比べて無増悪生存期間を有意に延長するなど高い有効性が認められた。2011年6月には希少疾病用医薬品として指定を受けている。
国内臨床試験では、副作用が98.6%に認められている。主な副作用は、悪心(90.4%)、好中球減少(87.7%)、ALT上昇(71.2%)などであり、重大な副作用は肝不全、肝機能障害、骨髄抑制、横紋筋融解症、重篤な過敏症、感染症などが報告されている。
本薬は多くの有害事象が認められており、国内での治験症例が限られていることから、全例を対象とした使用成績調査を一定期間実施することとなっている。
=日経メディカルより抜粋=
(記事元)http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201512/545083.html