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日光の避けすぎ…ビタミンD欠乏する恐れ

 皮膚がんのリスクなど、紫外線の害が叫ばれるようになって久しい。紫外線が強くなる5月、日焼けには注意したいが、最近、過度に日光を避ける風潮が強まり、乳幼児にビタミンD欠乏症が増えている。浴びるのも避けるのもバランスを心がけよう。
大阪市立総合医療センター小児代謝・内分泌内科の依藤亨さんは、1か月に1人は「くる病」や「低カルシウム血症」の子どもを診察する。
「20年前にはほぼなかった病気ですが、どんどん増えている印象です」
いずれもビタミンD不足による病気で、患者増加の主な原因が、日に当たらないこと。このほか、元々ビタミンDの含有量が少ない母乳だけの育児や、食物アレルギーで食べられない食品がある子どもの増加も要因とされている。
 
ビタミンDは肝臓と腎臓で活性化されてカルシウムの吸収を助け、骨や筋肉を丈夫にする。食物だけから必要量をとるのは難しいが、紫外線に当たると体内で合成される。  

ビタミンDが不足して血中のカルシウム濃度が低下すると、0歳児では低カルシウム血症による全身のけいれん、1~3歳児では、くる病によるO脚などの骨格異常が起こる。治療は、ビタミンDを数か月以上飲むことが必要だ。  来院した子どもの母親は「紫外線は体に悪いと思って避けていたのに。こういう病気があるとは知らなかった」と驚くという。  美白ブームもあり、最近、特に女性は日に当たるのを極端に避ける人も珍しくない。ビタミンD不足の女性から生まれた子どもは骨量が低くなるとされ、正常に生まれた新生児の2割がビタミンD欠乏状態だったという調査報告もある。依藤さんは「乳幼児だけでなく、妊娠の可能性がある女性や骨の弱ったお年寄りも注意が必要」と説く。

どれくらい日に当たればよいのか明確な基準はなく、場所や天気、時刻にも左右される。ただし、過度に紫外線を浴びるのは発がんや白内障のリスクを高めるので、バランスが大切だ。
 
「あえて日光浴するのではなく、日常生活の中で、普通の季節に合った服装をして顔や手に当たってしまう程度と考えて」と、「ひふのクリニック人形町」院長の上出良一さんは説明する。  

最近では紫外線アレルギーによる症状も注目されている。皮膚にある何らかの物質が紫外線によって変化し、アレルギー反応を引き起こす。  
多いのが、日に当たると赤い発疹が出る「多形日光疹」。5月でも、屋外で腕まくりなどして肌を露出していると発症することがある。女性の5%程度が経験しているとの調査結果もある。
症状は軽く、通常は数日で治る。  薬の成分が原因になる場合もある。「光接触皮膚炎」は、解熱鎮痛作用のある成分ケトプロフェンを含む湿布薬を貼った部位が日に当たると赤くかぶれる。

高血圧の人は「光線過敏型薬疹」に注意が必要だ。高血圧治療薬のARBに利尿剤ヒドロクロロチアジドを配合した薬の服用者が日光を浴びると、強い日焼けに似た症状が出ることがある。

(2014年5月15日 読売新聞)
記事元:yomiDr.