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JapanRx / 更年期症状に抗うつ薬「SSRI」服用で骨折リスク1.76倍

更年期症状に抗うつ薬「SSRI」服用で骨折リスク1.76倍

更年期になるとのぼせやほてり、動悸、不眠、イライラ、肩こり、腰痛などのさまざまな症状が現れることがあるが、こうしたつらい症状に抗うつ薬の「SSRI(エスエスアールアイ=選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」が有効な場合がある。
米国では2013年に保険適用となり、日本では保険が使えないものの、日本産科婦人科学会の診療ガイドライン(指針)で推奨されている(推奨度C)。
ところが、SSRIを服用すると骨折する危険性が高まってしまう可能性が出てきた。米ハーバード大学公衆衛生大学院のセウ・イハン氏らは、精神障害のない中高年女性37万人以上を調べたところ、SSRIを服用していた人では1年後の骨折リスクが1.76倍に高まっていたと、6月25日発行の国際外傷予防専門誌「Injury Prevention」(電子版)に報告した。

ホルモン補充療法の代わりに
女性は40~50歳代になると卵巣の働きが弱まって女性ホルモン(エストロゲン)が少なくなり、体にさまざまな症状を引き起こす。こうした更年期症状の代表的な治療法は、体の中で作られづらくなったエストロゲンを補う「ホルモン補充療法(HRT)」だが、これの代わりに抗うつ薬のSSRIも有効とする研究結果が多く報告されている。そのため、米当局のFDA(食品医薬品局)は2013年に、日本では「パキシル」などの商品名で処方されているSSRIのパロキセチンを、ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり、発汗などが突然現れること)に対する治療薬として承認した。

 一方、SSRIを含む抗うつ薬は精神障害患者において、骨折する危険性を高める可能性が指摘されている。ただし、精神障害自体が抗うつ薬とは別に骨折の危険性を上昇させるとの説もあり、精神障害のない人で抗うつ薬の使用が骨折リスクを上げるかどうかは分かっていなかった。

 セウ氏らは今回、1998年1月~2010年12月にSSRI、胃薬の「H2ブロッカー」、同じく胃薬の「PPI」のいずれかによる治療を始めた精神障害のない40~64歳の女性について調べた。
SSRIを処方されたのは13万7,031人、H2ブロッカーもしくはPPIを処方されたのは23万6,294人。処方されたSSRIはパロキセチンのほか、セルトラリン(日本での商品名「ジェイゾロフト」)、エスシタロプラム(同「レクサプロ」)、フルボキサミン(同「ルボックス」「デプロメール」)などだった。

5年後も骨折リスク高いまま
解析の結果、SSRIグループでは、胃薬グループに比べて1年後の骨折リスクが1.76倍高かった。SSRIグループの骨折リスクは2年後も1.73倍、5年後も1.67倍と高いままだった。

 この結果について、セウ氏らは「精神障害の患者を対象とした研究の結果と一致するもの」とし、「骨折リスクの上昇を抑えるため、SSRIによる治療期間をできるだけ短くする必要があるかもしれない」と考察。さらに、胃薬のPPIもわずかに骨折の危険性を上げると報告されていることから、今回の結果ではSSRIの骨折リスク上昇が過小評価された可能性もあるとしている。

 今後の課題としては、SSRIを服用する量によって骨折リスクが変化するかどうか検討することを挙げた。

(2015年7月9日 読売新聞)
情報元:http://www.yomidr.yomiuri.co.jp