白内障による眼内レンズの交換が睡眠を改善
(ロイターヘルス) - 白内障手術中に新しい眼内レンズを埋め込む高齢者は、よく見えるようになるだけでなく、
良く眠れるようになるかもしれないと、目に入る光がどのように体内時計を調整するかについての新しい研究で示されています。
『JAMA Ophthalmology』に掲載された研究結果によると、小規模の実験ではるものの、新しく眼内レンズを装着した人は、
同年齢の健康な人と比較して深く眠る時間が長くより認知テストでのパフォーマンスが高いことが評価されました。
アメリカ・ボストンにあるハーバード大学医学部のサラ・チェラッパ博士は、次のように述べています。
「白内障のレンズ交換は概日リズムの改善、認知能力の向上、睡眠の改善と関連している可能性があるということです。」
「これは、以前の白内障患者を対象とした、眼内レンズ交換が生理機能と行動の重要な側面で、有益な効果を及ぼしたことを示す最初の臨床試験の1つです。」
新しい研究は、視力の改善を超えた白内障手術の可能性のある利点を検討するために行われました。
「白内障患者には、視力の問題だけでなく、睡眠障害、認知障害などの生活の質を低下させる可能性があるその他の問題もあります。」
とチェラッパ博士は述べています。
「眼内レンズ交換は、これらの症状のいくつかを軽減するのに役立ち、長期的には白内障患者に多くの健康上の利益をもたらします。」
チェラッパ博士らは、研究の2〜3週間前に白内障手術を受けた55歳〜80歳の13人の白内障の患者と、
そうでない16人の健康な同年齢の人を対照として評価しました。
白内障手術を受けた患者の5人には、目の内側を保護するために紫外線(UV)を遮断する完全に透明な眼内レンズ、
他の8人にはUVと同様にブルーライトを遮断するように設計された、わずかに琥珀色のレンズが与えられました。
29人のボランティア被験者は3週間の治験のために睡眠研究室に通いました。
そこは、すべて夜間の人の活動を追跡するアクチグラフと呼ばれる腕時計のようなセンサーを備えていました。
被験者は毎晩6時に研究室に入りました。
まず1時間、薄暗い光の中で過ごし、その後、1時間半を暗闇で過ごしました。
更にその後2時間、光の中で過ごし、眠りにつく前の最後の30分を薄暗い光の中で過ごしました。
光の中で過ごす2時間は、毎週、異なるレベルの光の強度が使用されました。
眠っている間は被験者の睡眠サイクルを監視し、どれだけ長く深い睡眠がとれたかを計測しました。そして、翌朝、目が覚めた後に認知テストを受けました。
研究者らが彼らのデータを分析したところ、白内障患者は、対照群と比較して、光に反応して、
夜が近づくにつれて上昇するホルモンであるメラトニンの増加が少ないことを発見しました。
研究チームは、光に反応したメラトニンのこの「抑制」は、若い成人により一般的な標準化された反応を示します。
白内障患者はまた、深い睡眠により多くの時間を費やし、そして対照群において、彼らと同世代の健康な人よりも
認知テストにおいてより良い結果を得ました。
さらに、透明の眼内レンズを装着した白内障患者は、ブルーライト遮断レンズを装着した患者よりも良く眠れ、
認知テストでも優れたパフォーマンスを示しました。
白内障のない高齢者でさえも視力は年齢とともに変化するとチェラッパ博士らは記しています。
「加齢とともに、目の水晶体は自然に黄褐色へ変色を起こします。」
「そしてこのため、網膜に到達する光の量が、若い成人では約10分の1に劇的に減少するだけでなく眼への光透過スペクトルも変化します。」
と、彼らは説明します。
研究は小規模ではあるもののその発見は興味深いとニューヨーク市にあるNewYork-Presbyterian/Weill Cornell Medical Centerの
眼科医であるクリストファーE.スター博士は述べました。
「彼らは、すべての光の波長を通過させる眼内レンズが、すべてのカテゴリーのブルーライトを阻害する眼内レンズより優れていることを発見しました。」
とスター博士は述べました。
「そのため、彼らは透明なレンズの使用を推奨しています。」
研究が小規模であるため、調査結果は暫定的なものであると考えられるべきではあるものの重要である可能性があるとスター博士は述べました。
白内障手術は、米国で最も一般的に行われている外来手術です。それにより毎年300万人から400万人が眼内レンズ交換手術を受けています。
【以下のウェブサイトより引用】