睡眠中に実りある人生経験が再生され記憶に定着
過去に行われた神経科学研究では、睡眠が記憶の統合に重要な役割を果たすことを一貫して示しています。
たとえば、いくつかの神経画像研究では、人間が覚醒時の経験を暗号化している間に活性化される脳領域では、睡眠中、特にノンレム睡眠中に後になって再活性化できることを示しました。
興味深いことに、同じ脳領域が、徐波活動(SWA)の増加にも関連しています。
更に興味深いことに、これらの脳領域とSWAの活性化は、記憶の最適化に関連する2つのメカニズム、つまり神経再生とシナプス恒常性に関連していることが知られています。
これらのメカニズムは通常、時間の経過に伴う動作の改善に関連しています。
スイスのジュネーブ大学の研究者たちは最近、睡眠中に再プロセスされる記憶を脳が選択する方法を調査することを目的とした研究を実施しました。
学術雑誌『ネイチャー コミュニケーションズ(Nature Communications)』に掲載された論文で発表された彼らの発見は、脳はやる気につながるような動機付けとの関連性の高い記憶、つまり、自分のためになる記憶や人生経験の統合を優先する傾向があることを示唆しています。
「進化論の観点では、人は危険を回避する、食べ物を見つける、賞賛されたりお金を得るなど、生存を促進する情報を保持する必要があります。」
と研究者らは論文に記しています。
「ここでは、報酬の有無での出来事での神経表現が睡眠中の再活性化に優先するかどうかをテストします。」
研究者たちは26人の健康な参加者に対して実験を行いました。
参加者は2つのゲームをプレイするように求められました。
まず最初は、『フェイスゲーム』と呼ばれるもので、それは、顔についての情報の処理に特化した脳ネットワークを活性化するために特別に設計されました。
2つ目は、『迷路ゲーム』と呼ばれるもので、空間ナビゲーションに関与する脳の領域を活性化するゲームです。
フェイスゲームでは、参加者は提供された一連の手がかりに基づいて特定の顔を特定するよう求められました。
迷路ゲームでは、道しるべとなるいくつかの矢印を使用して、迷路の出口を見つけるように求められました。
機能的MRIと脳復号技術を使用して、ジュネーブ大学のヴァージニー・スターペニッチ氏と彼女の同僚は、参加者に覚醒中に観察がされ、徐波睡眠中に自発的に再出現した脳活動の特定のパターンを示しました。
興味深いことに、これらのパターンは前向きな行動に対する報酬があった時に見られると知られているパターンでした。
「重要なことは、以前、報酬のある行動(つまり、複雑なゲームにおいての勝利)に関連付けられていた神経パターンの特権的な再活性化が報告されていたことです。」
と研究者らは論文で説明しました。
「さらに、睡眠中、行動に関連する脳領域での活動は、その後の、より良い記憶能力と相関します。」
スターペニッチと彼女の同僚は、睡眠中に、実りある人生経験の統合を優先する神経メカニズムを明らかにしました。
睡眠とその機能についての現状の理解を高めることに加えて、彼らの発見は、徐波睡眠中の記憶統合の研究に重要な意味を持つ可能性があります。
【以下のリンクより引用】
Study shows that rewarded life experiences are replayed and consolidated during sleep
Medical Xpress
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